らいかさんの感想、レビュー
らいか
京極夏彦「塗仏の宴 宴の支度」再読了。 絡新婦の厚さで懲りたのか、この百鬼夜行シリーズは「宴の支度」と「宴の始末」のシリーズ初の分冊。持ち歩くこともギリ可能になったので読み終わるのも少しだけ早かった。 内容は正直かなり忘れていた。うっすらした記憶ではシャーロックホームズでいうモリアーティみたいな奴が出てきたよなぁぐらい。そして当時は、そのイメージのせいでこれまでのシリーズの中でイマイチな印象だった本作。 ...のはずだったのだが、約20年ぶりぐらいに読み直して見ると、いやこれちゃんと面白いじゃないか。うん。 この宴の支度は、支度というだけあって6編の短編集の形。そしてそれぞれ妖怪の名前のタイトルと共に主人公が変わる。 「ぬっぺっぽう」関口 「うわん」朱美 「ひょうすべ」京極堂(関口) 「わいら」敦子 「しょうけら」木場修 「おとろし」織作茜 これがどれもいい。特にいいのが「おとろし」。織作茜がとてもいい。老獪なジジイとの駆け引きも、多田羅との会話も、津田の仮面を剥ぎ取るところも、いい!いいぞ!織作茜!!っとなってきたところへの....ああ!!そう、そうだった...関口...お前はぁ.. ということ興が乗ってまいりました! さて宴を始末しに参りましょうかね。
京極夏彦
京極夏彦「絡新婦の理」再読了。 最新作「鵼の碑」を読むための読み直し。やっと5作目。長かった..とんでもなく厚いので家でしか読まなかったのが敗因。なのでここ最近は修行僧のつもりで持ち歩いた。そのおかげでついに勝ったぞ。 発行年をみて驚いた。1996年だと。ほぼ30年前じゃないか。いやはやすごい。そしてこの絡新婦の理は今の時代にこそ読むべき小説なのかもしれない。ジェンダーフリーやダイバーシティなど今さら何をいわんや。もともと日本に古来よりあったものの焼き直しではないか。そんな思想は古来より知ってたよ日本人は。となる。 本巻にでてくる呉美由紀は、その後のサイドストーリー今昔百鬼拾遺にも登場するキャラクターで結構好きなキャラクター。特に中盤以降の覚醒してからの呉美由紀がたまらん。ただ覚醒したばかりだからわかっているのだが、どう動いていいのかわからない感じも好きだ。 美由紀の覚醒に拍車をかけるのが待ってました京極堂。憑き物落としの始まり。このシリーズの最大の見せ場。うんうん、たまらないねえ。特に今回の中でもいいのが、織作葵を落とすシーン。頭のいいもの通しの駆け引き。最後まで落とさない京極堂の優しさ。でも....。くぅ...。 さてさて、鵼の碑までもうひといき。次は塗仏の宴だ。これは2部作に分かれてるので持ち歩くのが少し楽だね。
夢野久作「空を飛ぶパラソル」読了。 表題含む8つの短編。 「空を飛ぶパラソル」「いなか、の、じけん」「復讐」「ココナットの実」「怪夢」「キチガイ地獄」「老巡査」「白菊」。 久しぶりの夢野久作。やはり夢野久作の文体が好きだ。なんかリズムがいいんだよね。声に出して読みたくなる。 この短編集は夢野久作の経歴の中で、新聞記者であった経験をもとにして書かれたものを集めてる気がする。そればっかりでもないかもしれないが。うん、面白かった。
夢野 久作
劉慈欣(リウ・ツーシン)「円」読了。 13編の短編集。 これNetflixにあるブラックミラーみたいにSF短編ドラマとして映像化してもらえないだろうか。全部良い。全部良いぞ。三体でこの作家さんを知ることができてよかった。感想を少しずつ。 「鯨歌」 くじらはうたう。かなしみの歌を。 「地火」 犠牲無くして進化なし。考えさせられる。 「郷村教師」 田舎と超高度な文明の落差がよき。 「繊維」 筒井康隆を感じる短編。なんか懐かしい。 「メッセンジャー」 好き。アインシュタイン。 「カオスの蝶」 バタフライエフェクトこれ映画になるんではないかのレベル。 「詩雲」 神が人を真似て詩を作る。そして思いつく。全ての文字の組み合わせを作れば李白の作った詩を超えたものもその中に含まれる。ただ、感動は検索できない。深い。 「栄光と夢」 かなしい 「円円のシャボン玉」 唯一のハートウォーミング 「二〇一八年四月一日」 SF的エイプリルフール 「月の光」 ゆめかうつつか。 「人生」 胎児よ胎児よなぜおどる 「円」 人間コンピュータ ああ、もっと、もっとこの人の作る物語を読ませてくれ。
劉 慈欣/大森 望
高田大介「図書館の魔女 烏の伝言(つてごと)」下巻。再読了。 またラストを外で読んでしまった。不覚。前回覚えたじゃないか、この本を外で読むと泣いてしまうからやめなさいと。コーヒー屋の通路側にあるカウンターだったから誰にも見られてないはず。たぶん。 ああ、愛すべきキャラクターたち。 剛力達、鼠達、二ザマの面々、そして黒(ハク)... 君たちにまたしばらく会えないと思うととても寂しい。いや、でもまたすぐに会えると思ってるよ。霆ける塔(はたたけるとう)で。 いやほんともうこの図書館の魔女シリーズは、これまでの読書体験の中でもトップクラスに輝く作品。たまらなく魅力的な小説。 そして下巻ではとうとうあの人。 そう、マツリカが登場する。 まってました姐さん!! マツリカとワカンのやり取りはずっとニヤニヤしてしまう。ああおれもマツリカに言われたい「お前、面白いな」と。もちろん手話で。 あと鼠たちも愛おしい。虐げられた生活を強いられながら心の底にある矜持だけは絶対に曲げない。その信念が剛力たちとも二ザマの面子とも揺るがない部分として繋がっていく。もう泣くて。鼠が鍋を食べるシーンでさえ泣いてしまうて。 そしてこの小説のすごいところは新たな知見が得られるというか、目から鱗の体験をさせて貰えるところ。 漢字(小説の中では本字)と仮名のどちらが簡単でどちらが難しいか。言葉の並べ方が上手くできないものにとって、仮名は一字だけでは意味のない言葉だから漢字を分解することによって意味がわからなくなる。だから仮名がわからないやつに漢字なんてわかるわけがないと言うのは思い込み。漢字の方が一字で意味まで表してるものな。驕り高ぶった考え方をしてたわ。ああ、なんという知見、目から鱗ぼろぼろ。 あーあ。また読み終わってしまった。読んでる間は楽しいのに、読み終わると寂しい気持ちになる。まったくもうこの本は。早く次を読ませてくださいな。お願いします。
高田 大介
高田大介「図書館の魔女 烏の伝言(つてごと)」再読了。 大好きな図書館の魔女シリーズ第2弾。たぶんそろそろ第3弾の「霆(はたた)ける塔」が発売されるのではなかろうかとの期待も込めての再読中。 この上巻、初めて読んだときはなかなか文章が頭に入ってこず苦戦したのだが、再読では全くそんなことはなく、すらすらと読めてしまうという前作同様の高田大介マジック。もう舞台設定がわかってるからなのだろうか。 今回は、二ザマの内乱から逃げる姫さまの手引きをする山賤(やまがつ)と呼ばれるものたちが、逃げついた先の港町で陰謀に巻き込まれるお話。 烏の伝言という副題の通り、メインとなるキャラクターはカラスを自在に操る鳥飼のエゴン。その容貌は顔の傷によりふた目と見れない醜悪さ。しかも言葉が使えないため、周りからはカラスとしか話せない愚鈍なものと思われている。 このエゴンと港町で協力者となるカラムのやり取りがとてもとても好きでたまらない。話せないから、顔が醜悪だから、カラスとしか意思疎通できないから愚鈍とは限らない。でもそう思われてもしょうがないという諦め。なんというもどかしさなのだろう。よかったね、エゴン。 そしてカラム。おまえ....かぁっ、言えない。 さあ下巻だ。図書館の魔女シリーズの本領発揮だ。再読だけど読むのが楽しみでしょうがない。だってもう面白いってことがわかってるのだもの!!
澤村伊智「ファミリーランド」。 これ短編集だったのね。全部で6篇。 「コンピューターお義母さん」 「翼の折れた金魚」 「マリッジ・サバイバー」 「サヨナキが飛んだ日」 「今夜宇宙船(ふね)の見える丘に」 「愛を語るより左記の通り執り行おう」 澤村伊智による近未来SF世にも奇妙な物語といったところなのだろうか。現在から100年ぐらい経った未来の話。現在のデジタル社会が100年進んだ世界で社会でわれわれはどういう生活をしているのだろうか。もしかしたらこの6篇は全て現実となってる可能性もある。そう思うと少し怖い。 6篇の中では最後の2篇「今夜宇宙船」と「愛を語るより」が好きだな。あと澤村伊智さんの文章はやっぱ読みやすい。するすると読めてしまうので不思議。
澤村伊智
劉慈欣(リウ・ツーシン)「三体 死神永生 下」読了。 とうとう読み終わってしまった。すごい...いや、とんでもない小説だった。この衝撃は久しぶりだ。図書館の魔女以来かも知れない。 この作者さんは天才だと確信する。本当にこんなことが起こった時、ひとりひとりが、国が、人類が、どう考えてどう選んで、どう行動して行くのか...そしてそうなってしまうのがわかるからこそ、とても怖い。 もうこれは歴史書だと思う。 未来の宇宙歴の歴史書。 ああ、確かめるためにおれも冷凍睡眠で未来に行ってみたいな。大峡谷時代は耐えられないもの。 三体Ⅰ、三体Ⅱ、三体IIIと全て読み終わっての感想だけど、ストーリー的にはⅡが一番。IIIはⅠ、Ⅱでそこまで深く入らなかったSF的要素がてんこ盛り。 環太陽加速器とかさ。もうわっくわくする。宇宙だとそもそも真空状態だからトンネルみたいな輪っかで作る必要ないとか。くぅ。たまらん。 あと驚いたのが、光速を遅くさせるという話。特殊相対性理論からすると光の速度より速いものは存在しない。だから暗黒領域では...そうか...そうなってしまうのか....うわぁ...なんでそんなこと思いつけるんだよこの人...ほんと天才だわって思ったり。光のドップラー効果出てきたり、光粒じゃなく次元を使ったあれだったり、いろんな目新しい考え方というか知識を得ることができたのがとても楽しかった。そうか、宇宙ってそうなんだって。 でも宇宙のデカさからするとこの考えもいろんな考え方のうちのひとつでしかないんだろうね。 ただ、次元の考え方は目から鱗。そうか、そういうふうになるのかって。ドラえもんの4次元ポケットのおかげで4次元目は時間軸と思ってたけど、やっぱそうじゃないよねえ。4次元目が時間だったら5次元目はなんになるんだよってなるもんね。なるほどなるほど。 ああ楽しい体験だった。よし、これはこの作者の他のもの読まねばだ。
劉 慈欣/大森 望/光吉 さくら/ワン チャイ/泊 功
劉慈欣(リウ・ツーシン)「三体 死神永生 上」読了。 Netflix版の三体が始まるのと同時期にこの文庫版3部作の連続刊行も始まり、原作を読み終わるまではNetflix版は観るまいと決めたのだが、Netflix版は三体Ⅰから三体Ⅱの入りぐらいまでやるらしいという情報を仕入れたので、Ⅱまで全部読み終えてからNetflix版を観た。最後あたりこの辺の話はNetflixオリジナルなのかなあと思ってたのだが、おい、Ⅲの話入ってるじゃねえかこのやろうやっぱり全部読み終えるまで観るんじゃなかったと過去の自分を責めつつ、やはりこの小説... 抜群に面白い。 面白いからこそ内容を先に知りたくなかった。でもそこはさすが原作。ドラマ版より遥かに面白くて遥かに深い。 雲天明の苦悩がえげつない... ああぁぁ....雲天明...なんという...それでもなお純粋さを失わない人間性とはいったいなんぞや。 そして青銅時代......せめて藍色空間..お前だけは... と、もうほんとエピソードごとに心が揺り動かされるし人間とはって考えさせられるし、フィクションだけど実際に起こったらそうなってしまうだろうというところまで、なんでここまで考えられるんだろうこの作者はと驚嘆させられる。 あとⅡの主人公、羅輯(るおじー)。やっぱりめちゃめちゃかっこいい...面壁者であり執剣者。なんという、なんという意思の強さだろう、たまらんな。 と思って読み進めてた10数ページ後。なんてこったい。えらいこっちゃだぞ人類。ああああもうどうなっちまうんだ!もう大騒ぎ。 さらにさらに藍色空間と万有引力の追いかけっこからの次元に対する考察。いやもうほんとひと言すごい。高次元に対する考え方をここまで考察でるのか...それこそ高次元から作者の頭の中覗いてみたいぞ。と興奮続きの上巻クライマックスでの、智子が言うあの1行の言葉。 久しぶりに小説で鳥肌がたったぞ。 やはりきたか。 ああたまらん、たまらんぞこの小説! いざ下巻へ!!
清水朔「奇譚蒐集録」読了。 廣章(こうしょう)と真汐(ましお)コンビの今回の旅は信州へ。諏訪大社の近くで12年に一度開かれるという奇祭に巻き込まれる。 やはり清水朔さんの文体に慣れるのに少し時間がかかる。わかりづらい文章というわけではないのに読むペースが落ちる。内容が好きだからシリーズはずっと買ってるんだけどね。 シリーズを追うごとに真汐が成長していくのがわかって楽しい。前作の哀しい事件をもとに今度こそはと誓う真汐。ああ...。 その土地、その風土で育って来た土着の祭りに対し、外から来た人間がとやかく言うことはできない。でも、その祭りの意味・意義が本当に純粋なものであればだが。
清水 朔
夏木志朋「二木先生」読了 本の趣味が合う友達に勧められて、読んでみたいなと思ってたやつで、そのことをたまたま別の友達に話したら、その本持ってると言うので借りますた。 タイトルからして二木先生が主人公と思ってたが、主人公はその生徒である田井中。この田井中の心情が京極夏彦並みにだらだらと続く。でもそういう文章は嫌いではなくどちらかというと好きな方。そして作者の文章も上手いのでとても読みやすい。さらにこの後どうなるといった感じも上手いので一気に読んでしまわせる力がある小説かと。 肝心の内容はというと、うん。面白かった。面白かったんだけど、絶賛かといわれるとそこまでではなかった。 それはなんというか、うん、単に好みだと思う。話の展開の仕方がね、好みが分かれると思う。読みながら、おおこういう展開できたかと喜んだ時もあったが、ああこういう展開にしちゃうのねと言う時もあり、50vs50でずっと進んでたのだが、最後の着地点で好みじゃない方に落ちちゃったなと。 あとこれはたぶん俺自身が年取ってしまったせいもあると思う。もし10代後半から20代に掛けてこれを読んでたとしたら絶賛していたのかもしれない。ああ、大人になってしまったなあ。 しかしまあなんだこの感想。自分で言うのもなんだが、小説の内容が全くわかんねえな。
夏木 志朋
澤村伊智「すみせごの贄」読了。 ご存知、比嘉姉妹シリーズの最新作は6つの短編集。「たなわれのしょうき」「戸栗魅姫の仕事」「火曜夕方の客」「くろがねのわざ」「とこよだけ」「すみせごの贄」の6つ。 それぞれ関わるのは、たなわれ野崎、戸栗魅姫 琴子、火曜夕方真琴&琴子、くろがね真琴、とこよ野崎&琴子、そしてすみせごは来ました辻村ゆかり。 もう辻村ゆかりと聞くだけでゾワっとするような身体になってしまった。6つの中で好きなのは戸栗かな。なぜなら琴子ファンだから。火曜ととこよでも琴子でるけどほんの少しなのでね。 でもやっぱこの比嘉姉妹シリーズは好きだわ。ずっと続いて欲しい。あとばくどうの夢文庫化して欲しい。
劉慈欣(リウ・ツーシン)「三体 黒暗森林 下」読了。 こりゃあとんでもない。とんでもなく面白い。すごい、ほんとに凄すぎる。凄すぎてもう凄いどういう言葉しか出てこなくなるぐらい語彙力が低下する。 何が凄いってまず設定がすごい。面壁人と破壁人の考え方とか、近未来の生活や宇宙船の設定から何からなにまでほんとにあり得るなと思わせるし、理論もきっちりしてるのでもしかして本当にそういう未来がくるのかもしれない。 そのとんでもなく考えられた設定の数々の上で繰り広げられるドラマというか知能戦。これがまたたたまらんのだわ。 話のメインとなるのは三代続く軍人の家系である章北海(ジャンベイハイ)と宇宙社会学者の羅輯(ルオジー)。この2人がまたもう...ね。 章北海の方は、いやまじか、まさかそうくるのか...え、まさかこれを予想してたのか...うおぉ、この先を読み進めるのが怖い...怖いけど止められない...ってなるし ほんで羅輯....おおおぉぉ... 羅輯...おまえまじか...いやまじか....いやほんとまじかお前...すげぇ...おまえすげぇよ... ってなるのよ。(読んでない人にはなんのこっちゃだろうが、読んだ人ならばわかってくれるはず!) そしてそして何よりもサブタイトルになっている黒暗森林という言葉。くはぁ...そういうことか...なんということだよ。いやでもほんとにそうなのかもしれない。でもそうじゃないとも信じたい...うわぁ...めちゃめちゃ考えさせられるわ。 と感動に震えつつのラストシーン。ここも大好きだ。まさかここであの人を持ってくるのか...くぅぅ、たまらん。 P.S.これは願望なのだが、葉文潔と羅輯(ルオジー)の墓地での会話。あれは文潔の贖罪だったのかもしれないと。
劉 慈欣/大森 望/立原 透耶/上原 かおり/泊 功
劉慈欣(リウ・ツーシン)「三体 黒暗森林 上」読了。 いや、面白い。抜群に面白い。前巻で三体人の存在と三体人が地球に到達するまで400年かかるということ。そしてその400年の間に人類の技術の進歩を止めるための智子(ソフォン)計画。これだけでもワクワクしていたのに、今回の巻で明かされる面壁者計画。そして呪文とは...すげえ。すげえぞ。 6月に三体IIIがでるから、も少しゆっくり読もうと思ったけど、こりゃもう止められないわ。三体Ⅱの下巻に入らせてもらいます。だってこんなところで読むのやめるなんてできないもの。 さあどうする、そしてどうなる人類!!
三上延「ビブリア古書堂の事件手帖 扉子たちと継がれる道」読了。 主人公が栞子さんの娘、扉子になってからのシリーズ4作目。ほんとこのビブリアのシリーズはなんかずっと面白い。ミステリー小説だが基本的には殺人事件は起こらず、本にまつわる謎解きがメイン。この謎と謎解きの加減が絶妙。今回は夏目漱石を含む鎌倉の文士達が立ち上げた「鎌倉文庫」がテーマ。 そして今作はなんと言っても智恵子、栞子、扉子の3世代が絡むのである。しかも智恵子に至っては学生時代の智恵子と、後に栞子の父になる登も登場するというか登の視点での章があるのだよ! と、こう書いてもこのシリーズを読んでない人にはさっぱりだろう。だがそれでよい。なぜならシリーズ通算11作目にあたるのだから、シリーズを読んでる人にだけ分かればよいかと。ね。
三上 延
京極夏彦「書楼弔堂 炎昼」 田山花袋、平塚らいてう、乃木希典...そして松岡國男。 前作の「破曉」よりも面白さが増した気がする。 塔子という語り部がいるからだろうか。 今回の話の中で原文一致運動が出てくるが、この原文一致運動というのがとても面白いと思う。話す言葉と書く文字が違うという文化ははたして日本だけなのだろうか。言葉が先か文字が先か、鶏が先か卵が先か問題みたい。 シンプルに考えるとまず言葉ありきだと思う。言葉がまずあって、これまたシンプルに言葉を文字にするってのが素直な流れなのだが、なぜ話してることと違う言葉を記すのだろうか。 ただ、もし言葉のない狩猟時代がなんかに洞窟内に見た動物の絵を描いて記して、それが文字に変化していったとしたら文字が先に生まれた可能性もある。そして描いた動物を説明するために言葉が生まれたと。 ああやっぱり言語学とか学んでみたい気がするなあ。不思議だ。 話が逸れた。どうにも京極夏彦の本を読むとこうやって別のことを考え出すからいかん。 今回の話の中では平塚らいてうと乃木将軍の話が好きかな。「人が死なねばならぬ義などない」うん。まさにその通りだと思う。 よく法事なんかで坊さんがお経を読んだ後に説教をやるときの話は好きではないのだが、弔堂の主人の説教(元僧侶だから説教ではないのか)であればもっと聴いていたい気がする。
京極 夏彦
ホーガン「星を継ぐもの」読了 言わずと知れたSFの金字塔的作品。なのだが読むのは初めて。なぜなら翻訳本だから。翻訳本が苦手なのはまずは名前。ファーストネームで読んだり愛称になったりとで覚えるのがとても難しい。次に比喩表現が日本と違うから戸惑う。特に会話の中の比喩表現。でもそれを乗り越えて読んで良かった。有名なだけはある。 いやすごい。これはほんとすごい。 何がすごいってこれが描かれたのが1977年ってとこ。前半は翻訳本に慣れてないとこもあって結構読むのに時間かかったのだが、後半はもうほぼ一気。 1977年初版。ホーガンさんごめんなさい。人類はまだ全世界共通になって宇宙探索のため共同技術開発するって時代に至っていないです。まだまだ世界はお互いにいがみ合ってます。 小説の中では2058年には木星探索を行えるようになってるんだが、まだまだ先だなあ。 この小説。SFなのだが、どちらかというと推理小説を読んでるかのような感覚に陥る。 あらすじにも書いているけど冒頭、月で赤い宇宙服を着た謎の宇宙人の遺体が見つかる。チャーリーと名付けられたその遺体がなぜそこにあったのか、そして最も不可解な謎はチャーリーの死体が5万年前だということ。その謎を解いていくのがメインの話だからだ。 しかしその謎解きの加減が抜群だ。 主人公のヴィクターハントがまるでアームチェアディティクティブをしているかのようだ。 そしてもう1人の重要人物ダンチェッカー。シャーロックホームズで行くとワトソンの位置になるのだろうか。反目し合ってたから違うかもしれんが。 SF好きなら一度は読んでおいた方がいい作品かも知れない。面白かった。
ジェームズ・P.ホーガン/池央耿
劉慈欣(リウ・ツーシン)「三体」読了。 普段翻訳本はほぼ読まないのだが、文庫化され平積みされてる表紙を見てたら、なぜ読まないという得体の知れない圧を感じたので読み始めてみた。 本に挟まっていた登場人物表を見て少し後悔。翻訳本が苦手なのはこれなのよ。登場人物からして葉哲泰(イエ・ジョータイ)、葉文潔(イエ・ウェンジェ) 、葉文雪(イエ・ウェンシュエ) ...名前が覚えられない。 でもこの文庫版。優しいのはそのページの最初に名前が出てくる時は、何度出てきた人でも必ずルビを振ってくれている。これが非常に助かる。あれこの人の名前なんて読むんだったっけって見返す時、読んでるページの最初あたりを探せばいいんだもの。ありがたいねえ、と読み進めていくとおいおいなんだこの小説.... 抜群に面白いぞ。 もうワクワクする言葉だらけ。科学の境界とか 、物理学は存在しないとかから始まって、いやまじか2進数をいやコンピュータをそう表現するのとか、太陽のエネルギー鏡面で反射力増強、からのそういう展開かぁ!とか、もうたまらんちんもとっちめちんなのである。 そしてストーリー展開もまた激動。あああ、文潔(ウェンジェ)..... ってなったり、あとまた史強(しーちゃん)がいい。最初ムカつくやつだけど、お前そのタイミングで出てくるかってとこがとてもいい。主人公同様に大史ーー!!って叫びたくなる。もう感情が大忙し。 ただこれ読むのにはかなり力が入るのも確か。ゆっくり読み進めないといけないので時間がかかる。あと相対性理論、量子力学、粒子加速器など どんなものかぐらいは知ってる必要があると思う。 でもそれを置いても抜群に面白い。世界的に大ヒットしたというのも頷ける。こりゃ面白いわ。はやく続きが読みたい!!
劉 慈欣/大森 望/光吉 さくら/ワン チャイ/立原 透耶
高田大介「図書館の魔女 第四巻」再読了。 あああああ、読み終わってしまった。読み終わりたく無かった。ずっとこの世界の中にいたかった。 すごい。 ほんとにすごい小説だ。 3巻の終わりのマツリカと二ザマ帝の腹の読み合いの答え合わせから、序盤の地下水路での発掘まで、これまで蒔かれた全ての伏線がどんどん繋がっていく気持ちよさ。 その快感に酔いしれながらの歴史的会合、二ザマ、一ノ谷、アルディシュの三国会談。キリンの弁舌に取り込まれるアルディシュの2人。その小気味良さにコシュート同様ぷわっと鼻息を吹いてしまう。もう読んでいて顔が綻びつつ泣いてしまうというね。 そしてキリンの活躍を見てほっとしたのも束の間、宿敵を追い詰めにいくマツリカ達。それにつきそうオルハン、アキーム、アダン、イズミル、そしてヴァーシャ...。物語序盤でマツリカの水遊びにただの護衛任務として仕えたもの達。キリヒトの宿命と共にマツリカがただの護衛ではない、ひとりひとりが人間であると認識した仲間たち。 その仲間達と激動を共に過ごし我が家へ帰ってきて食べるイラムの作る一杯のスープ。まるでそれを読んでいる自分も一緒に飲んでるかのように身体に染み込む暖かさ。 それ共にその夕餉にまだまだ帰って来れないキリン。これがまた堪らない。ずっとニヤニヤしながらも泣くという訳のわからない感情。 そして最後に一番大事な場面。マツリカとキリヒト。胸が締め付けられる。単純に恋とか愛とか言葉で説明できる感情ではないなにか。言葉にした途端に陳腐なものになってしまいそうな大切な2人の感情。 もう涙が止まらない。 なんという小説なんだろう。 もう一度言う。 すごい。
高田大介「図書館の魔女 第三巻」再読了。もう見どころてんこ盛り。マツリカによる偽書をめぐる文献学講義に、一巻最後の水路の伏線の回収が始まり、農学者と共に胸が熱くなったところで、迫り来る敵のマツリカを封じる魔の手、からのマツリカと二ザマ帝とのギリギリの読み合い。あああたまらない。たまらないのにあと1冊で終わってしまう。わかってる。再読だからもう全部わかってる。でもなんだろう、あと1冊で読み終わってしまうというこの寂しさは。読み終えたくないのに読み進められずにはいられないこの物語力は。さあ、最終巻に入ろう。
高田大介「図書館の魔女 第二巻」再読了。 しまった。電車の中で読むんではなかった。電車内で涙を流してしまった。気づかれていませんように。 再読なのでもう全員のキャラクターとこの後の展開もわかっているというのに、なぜ2回目の方がより泣いてしまうのだ。 カラムとイラムの優しさにやられ、キリンとハルカゼの気持ちにやられ、そしてマツリカとキリヒトの関係性....もう...もう....心の奥がぎゅぅぅぅと掴まれて握りつぶされそうになってしまう。 なんという、なんという小説なんだろうかこの図書館の魔女という小説は。 もし一巻だけで読むのをやめている人がいるのだあれば、それはとんでもない過ちを犯していると思うので絶対に二巻の最後までは読んでください。二巻の最後まで読んだらもう三巻と四巻は読まずにいられないというか、読み終わりたくなくなるはず。ずっとずっとこの世界の話を聞いていたいと思うはず。 二巻の余韻に浸りといところだけど、三巻にはいろうか。いざ。
澤村伊智「恐怖小説キリカ」読了。 怖い。。。人間怖い。。。 いやちがうちがう。お化けとかの方が怖いです!!!ぼぎわん怖いです!!すいません! (閑話休題) 何と言ったらいいのだろう。これは。感想を書いてもいいものだろうか。レビューじゃないからいいかな。レビューなのかなこれ。読んでいるときより、こうやって感想書いている今が一番怖い。 はたして投稿してもいいものかどうか... この物語の主人公は作者澤村伊智。 物語は3章立てで、作者の章・キリカの章・友人の章となっている。 作者の章を読み始めて早々に、ああ、これは定番のあれパターンなのかな そうだったらがっかりだなと読み進めていたら。。。 おいおいそうきたのか、いやいやいやいやこわいて、こわいこわいぐへぇ、やめてやめてやめてぎゃぁ....後書きまでこわいってもうなによ... そんな小説です。ネットにある澤村伊智インタビューさえももう信じられません。
澤村 伊智
高田大介「図書館の魔女 第一巻」再読了。 たまらん。やはりこの本はたまらん。大好きだ。 初めて読んだ時はとてもとっつきにくい文章だと感じたのだが、再読でそれが全くなくなってる。この図書館の魔女の世界観を理解した上で読むからだろうか。そして再読でわかるあちこちに散りばめられた伏線の数々。くぅ。 いやでも、それよりもなによりもキリヒトとマツリカにまた会えた喜び。そしてハルカゼも、キリンも、イラムも、ヒヨコも、キリヒトの師匠も、包丁渡してくれた鍛冶屋でさえも全てが愛おしい。もう序章のキリヒトが里から出立するとこだけで泣きそうだもの。 ほんでもってこの第一巻はとても大切なことを教えてくれた巻でもある。それは手話というものについてだ。本の中で指摘される通り自分も手話は言葉が話せない人が使う言葉の代わりのものとして考えていた。浅はかだった。 手話というのは言葉の代替えではなく手話という独自の言語であること。言葉で表現できない手話だけの表現もあるってこと。なぜ発声して音で出すことだけが言語と思っていたのだろうか。恥ずかしい。 そしてその手話だからこそ生まれてくるキリヒトとマツリカの関係性....あああああもうっ!て身震いする。 いやあほんと再読して改めて感じるが、この図書館の魔女がこれまで読んだ本の中で1位かももしれんなと。さあ第二巻に行きましょうか。図書館の魔女の本領は第二巻の中盤からと個人的には思っている。そこから第四巻まではもうノンストップやで!!
澤村伊智「予言の島」読了。 初めて比嘉姉妹シリーズ以外の作品。さてさてどうかなと読み始めると... ん?比嘉姉妹シリーズは文章がスルスルと入ってきたのに、なぜかこの本はなかなか頭に入ってこない。なんかいつもと文体が違うからか?と思いつつ読み進めるうちにだんだん慣れて話も面白くなってきたのでさほど文体は気にならなくなった。 これはホラーというより横溝正史的なミステリーに近いのかな。一世を風靡した霊能力者宇津木幽子が「20年後に霊魂六つが冥府に落ちる」と予言した内容を確かめに島を訪れる主人公たち。そしてその詩の通りに惨劇が起こっていく...うーん横溝正史ってなる。 んでもやはりクライマックスになってくると澤村伊智節のエンジンがかかってきて、おおおおどうなるとページを巡る指が止まらなくなる...のるののだが.... そうか...そういうことか.... 最初に感じた違和感の正体は、 そういうことだったのか.... うーーーーーーーーーーーんこれはどうなのだ。確かにうん、そう言われるとそうなのだが。 ここは賛否分かれるところではないかなあ。嫌いではないが、こう、もっとほら、こう、ねっ。 といったところです。はい。 これで気になったのであれば読んでみてください。 おれはざっともう一回目を通します。 しかしやはり呪いというものは存在するよね。
「成瀬は信じた道をいく」読了。 素晴らしい。大好きだ。ずっと成瀬あかり史を読んでいたい。そして読み終わってしまったのがとても哀しい。全然系統は違うが図書館の魔女を読み終わった時のようだ。 ほんととても久しぶりに小説を読んで声を出して笑った。 なんだろう、とてもとても、 「間」 がいいのだ。文章の間がとてもいいので、読んでてつい吹き出してしまう。 そして読むのをやめられない。グイグイ引き込まれる。やめられないのに読み終わりたくないというジレンマ。 主人公の成瀬あかりは積極的に人に関わるでもなく、説教をする訳でもない。ただ自分の思うように生き、思うように行動してるだけ。それはたまに周りからは身勝手と取られる時もある。でも成瀬を知った人はみんなこういう「だって成瀬だもん」と。 それはもちろん成瀬のとても真摯で真面目で何事にも一生懸命になる人格によるものから発するのだが、この成瀬に振り回さ...いや関わる人たちもとてもいい。 成瀬あかりファンの小学生、父である義彦、真摯なクレーマー呉間言美、三代連続観光大使篠原かれん、そして親友でありゼゼカラの相方島崎みゆき。 成瀬および彼ら彼女らから出てくる名言の数々... 「私のドライブレコーダー」「ユニクロか」 「コンビーフはうまい」「戦国武将の志」... ああ、たまらない。 なんかこの成瀬シリーズは本を読むというより成瀬あかりに会いに行く感じなのだ。 早く次の成瀬あかり史を読ませてくれ!!! 予想では俺の空みたいに「大学生編」「社会人編」となってくのではと..ああ楽しみだ。
宮島 未奈
澤村伊智「さえづちの眼」読了。 「母と」「あの日の光は今も」「さえづちの眼」の三篇の中篇集。 「母と」真琴よく頑張った。えらいぞ。そして初めて登場する比嘉姉妹の母。ほんで比嘉家には7人の子供がいたこともわかる。琴子、美晴、真琴の三姉妹ではないのは前から仄めかされてたけど初めて7人と出てきた気がする。今後どう絡むのか楽しみ。まあちゃんと生きてればの話だが。 「あの日の光は今も」辻村ゆかりと湯水がでてくる。これは本シリーズ2作目であるずうの目は必須で読んでおく必要あり。それによって怖さが全然変わる。短編集でも出てきたけどこの辻村ゆかりの能力はまじちょっと勘弁して欲しいな。怖すぎるわ。 「さえづちの目」田舎の風習というか土着の信仰というか色んなものが混ざって遠野物語的で好き。そしてやっぱり琴子が好き。終わり方の謎は残るがその謎の残る終わらせ方も琴子の感じがして好きだなあ。 うん、やっぱりこのシリーズ大好きだわ。早く続きが読みたい。と今調べたら「ばくどうの悪夢」ってある!ああ!でもハードカバー!!はやく文庫化を!!
澤村伊智「ぜんしゅの跫」読了。 ご存知比嘉姉妹シリーズ第5段。段を増すごとに比嘉姉妹の沼にハマっていく。今回は5篇の短編。「鏡」「わたしの町のレイコさん」「鬼のうみたりければ」「赤い学生服の女子」「ぜんしゅの跫」 ほんとこのシリーズ好き。2回目の短編集なんだけど、これまでの登場人物にまた会えるのがすごくいい。 「鏡」はぼぎわんのあいつだし、「私の町のレイコさん」の弥生ちゃんはずうの目の編集長だし、「赤い女子学生」では古市!おまえ古市じゃないか、幸せになってくれようと言った風に。そしてタイトル「ぜんしゅの跫」では琴子の魅力が全開!!てか作者さん絶対映画版の松たか子を意識してるというかパロってるよね。笑。そういうのも含めて大好き。少し心配なのは「鏡」の中で出てきた真琴のこと。大丈夫だよね。このあと大丈夫だよね。あれは鏡の中の話だよね。 とぞわぞわしながら次行ってみよう。 次は「さえづちの眼」。
冲方丁「月と日の后」下巻。読了。 永井路子の「この世をば」を高校生の時に読んで道長の有頂天っぷりがとても面白かったのだが、本作はその娘彰子(しょうし)から目線で見たお話と、その彰子が国母となっていく物語。 物語というよりなんかドキュメンタリーを読んでいるかのようだった。会話がかなり少なく、日々移り変わる状況が説明されていく。新王の敦成の出産、最愛の一条天皇の崩御、道長と兼家の二家の確執、次の東宮をたれか、皇女はたれぞ、権謀術数うずまくなかで彰子が何を考え何を判断していったか、そしてその心の強さ。 淡々と進むのになんだろなんで面白いのだろう。不思議だ。紫式部が亡くなった知らせを聞いた時は「相棒よ!」と彰子と共に悲しみに暮れたりもした。 父が築いた藤原家の繁栄。この彰子がいなければたぶん道長一代で終わっていただろう。八十七歳の生涯を終えるまでに六代もの天皇を慈愛を持って見届けてきた彰子。せめて浄土で一条天皇と幸せに暮らしていますように。
冲方 丁
京極夏彦「鉄鼠の檻」再読了。 最新作「鵼の碑」を読むためにの読み直しがやっとのことで4作目。ああまだまだ先が長いなあ。でも読み直さないとなんか気が済まないのよね。ちらっと聴いた話だとやはり過去の登場人物たちがいっぱい出るそうなのでね。 鉄鼠の檻で出てくる新しい登場人物はナマズのような顔をした骨董屋の今川。 そして今作のテーマは「禅」。これがまた難しいんだなあ。雪山の中にある存在しない寺。成長しない娘、公案、見立て、大悟に小悟。 禅というのも、悟ると言うのもなんとなくこう言うものかなと思ってたのだがやはりなかなかに深いなあ。一度悟れば終わりということではなく、延々とその繰り返しというのはなんとなくわかる。だがやはり個人的には一生修行というのはできないなと。ちょっとした思考の遊びのような気もするし。 今作はこれまでと違って、ぞわりとした怖さは少し鳴りを潜めた感じかな。 さて次は絡新婦の理。いざ参る。
冲方丁「月と日の后」 冒頭から「この世をば我が世とぞ思う望月の」と藤原道長のあの有名な歌から始まる。もうつかみはオッケーだわ。そしてこの有頂天の曲を書いた道長の歌を好意的に受け止める3人の娘。ああ、なんかええなあ。 と思いつつ読み進めるが、やはり歴史小説を読み慣れてないのでなかなかなかに言葉が頭に入ってこない。みんなの名前も難しいしこれはなんと言う行事たなんだと説明が多いしと色々あるんだが、それでもなぜか読んでしまう面白さ。 その面白さは後半の紫式部が現れてから俄然上がる。ああ、これは面白い。紫式部のキャラがいいね。能ある鷹は爪隠すみたいな。うん、この2人の絆が深まったところで上巻はおしまい。 さあ下巻。どうなるのやら。
澤村伊智「ししりばの家」読了。 面白かった。いや面白かった。 面白すぎてほぼ一気に読み終わってしまった。まあ、今回出張で新幹線に乗って時間があったのもあるが。特に今作は琴子が主人公なので琴子好きとしてはたまらない作品。小学生の時の琴子はあんなにおどおどしてたのか。ふむふむなるほど。 そして今作に全編ずっとまとわりつくようにでてくる砂...砂....砂....高校の時に読んだ安部公房の「砂の女」を思いざざ..出しざざざざさ...しまっざざざざああああーーーー....ああ、頭の中に砂が.... となってしまいそうなほど。 しかし澤村伊智さんの4文字のひらがなで綴るタイトルの響きのセンスはすごいなと。「ぼぎわん」「ずうのめ」「などらき」「ししりば」。なんだかよくわからない言葉たちなのだが、なぜか不穏な感じを受ける言葉。 だめだ、もうこの比嘉姉妹シリーズが止まらない。今日本屋で「ぜんしゅの跫」と「さえずちの目」買っちまったよ。楽しみだ。
円城塔「バナナ剥きには最適の日々」 円城塔。名前は知っていたが読むのは初めて。確か若くして亡くなった作家さんが未完で終わった小説を引き継いで完成させた人ぐらいの知識。 解説によると円城塔の小説は「わからないけどおもしろい」と言われてるのだそうな。 確かに。 文章自体はとても読みやすく、一文一文は全て理解できるのに、全体を通すとわからなくなる。ただ、完全にわからないのではなくなんとなくはわかる。これが「わからないけどおもしろい」と言われる所以か。 言葉遊び、思考遊び、円城塔の夢の中に紛れ込まされたような感覚。それが好きかどうかなのかな。そして、どちらかと言えば好きである。 今作は表題含む10編の短編集。 全部が全部好きではなかったが、個人的に好みで行くと表題作の「バナナ剥きには最適の日々」と「equalのⅢとⅣ」と「捧ぐ緑」が好き。 「バナナ剥き」はバナナ星人が3枚皮と4枚皮に分かれてて、自分がどちらだったのかは死んでから剥いてみないと判別できないというのは面白かった。 「捧ぐ緑」はこれで一本小説が書けるような気がする。 1番わからなかったのが「墓石に、と彼女は言う」かな。何回読んでも難しかった。 うん、でも総じてやはり わからないけど、おもしろかったな。
円城塔
中島らも「こどもの一生」読了。 ずいぶん昔に舞台で見た「こどもの一生」たしか吉田鋼太郎とか出てたはず。みっちゃん役だったかな。ネットで調べると谷原章介がかっちゃん役だったかと驚き。 本小説はその舞台用の脚本を中島らもが小説版に仕上げたもの。 中島らもは20代の頃にはまって読み漁ったなあ。ずっと小説一辺倒だった自分が初めてエッセイ集というのに手を出した人かもしれない。そしてああコピーライターというものにもなってみたいなと思わせてもらった人。 最後に本人後書きがあるのもうれしい。久しぶりにらもさんに会えたよ。 本人後書きにもある通りこの作品は超B級ホラー。特に後半のピンポーンからはジェットコースター並みに話が進む。 舞台も大好きだったけど、小説版もやっぱ好きだなあ。 ああ、ガダラの豚も読みたくなってきた。
中島らも
澤村伊智「などらきの首」読了。 比嘉姉妹シリーズ第三弾。そして初の短編集。 めちゃ面白かった!「ぼぎわんが来る」「ずうのめ人形」と長編を読んできて、比嘉姉妹シリーズいいなあ、澤村伊智さんいいなあとなんとなく思ってたのだが、今回のこの短編集で大好きになった!! いい!比嘉姉妹とか野崎のサイドストーリーでキャラクターの深みが増していく感じ。大好きだ。全部で6つの短編が入ってるんだけど、やはり「居酒屋脳髄談義」がダントツに好き。なぜなら大好きなドグラ・マグラがオマージュされてるから。そしてこの短編の主役、ひとことも誰と書かれていないのに琴子だとわかるとこ。かっこいい。 そして「学校は死のにおい」ではなんと美晴がでるのである。くぅ..美晴...。 悲鳴だけが比嘉姉妹でもなく野崎でもなかったので不思議に思ってたが、そうかリーたんがずうのめの人形のあの子か。なるほど。 ということで、比嘉姉妹シリーズにどっぷりハマってしまいました。 次作「ししりばの家」を手に入れねばだ。
夏川草介「始まりの木」読了。初めての作家さん。偏屈民俗学者とその助手が日本中を北へ南へ...令和の遠野物語と帯に書かれてたので、大の遠野物語好きとしては読まない手はない。と言うことで読み始めました。 うん、面白かった。面白かったのだが... うーーーん、求めてるのはそうじゃないのだよ。こう、もっと各地にいってその土地の風俗や土着の信仰なんかを調査してその途中に遠野物語のような不思議な事象に出会ったり説話を拾遺したり...みたいなのを期待してたのだが... 。そうじゃなかった。勝手に期待したこちらが悪いのだけどね。だって帯に書いてあるんだもの。令和の遠野物語って。帯って大事だよね。 ということで本作は自分の印象として、どちらかと言うと民俗学はおかずレベル。主食は主人公2人のキャラクターを主軸としたヒューマンドラマだわ。杖をつきながらあちこち旅する偏屈な民俗学者のじいさんと、そのじいさんに魅せられて民俗学に興味を持ったあっけらかんとした性格の女子大生。この2人のキャラはとても魅力的。なので、ヒューマンドラマとしてはとても面白いと思う。現に3回泣かされたし。文体もリズム良くサクサクと読める。そう、充分面白いのだよ充分。変な方に期待してハードル上げちゃったなあ。
夏川 草介
光瀬龍「百億の昼と千億の夜」読了。 しばらく前に本屋さんで平積みされてて気になってた本。タイトルがかっこいいよね。ほんでもって1973年が初版というから驚き。 久しぶりのがっつりSFだったなあ。ギリシャの哲学者プラトンからゴータマシッダールタ(釈迦)からナザレのイエスに阿修羅王たちはなぜこの世に存在したのか。そして神とはなんなのか。 ミクロはマクロ、マクロはミクロ 色即是空 空即是色 うーーむ。この時代からこういう話を考え作ってすごいなあ。宇宙ってとんでもない広さを人間からすると持っているように見えるけど、実はとんでもない巨大な生物のだった一個の細胞だったりするのかもしれないしね。 少し何をいうとSF的な情景描写がかなり多いので、文章がとっつきにくいとこがあるかな。 うん、でもSF好きなら一度は読んでおいたがいい気はする。漫画化されてるからこの世界観をどのようにしてるのか興味あるな。
光瀬龍
北森鴻「螢坂」読了。 連作短編である香菜里屋シリーズ第3弾。今回は 「螢坂」「猫に恩返し」「雪待人」「双貌」 「孤拳」の5編。 前作の桜宵はもの悲しさが全体にあったのだが、今作の5篇は全体的に少し上向いた感じがする。 うん、良かった。 順位的に行くとどうだろ。個人的には「孤拳」「双眸」「猫に恩返し」「雪待人」「螢坂」の順かなあ。基本的にやはり少しだけでも救いがあって欲しいんだよなあ。 ないとは知りつつ幻の焼酎「孤拳」飲んでみたいな。
北森鴻
京極夏彦「狂骨の夢」再読了。 最新作「鵼の碑」を読むためにの読み直しがやっとのことで3作目。 かなり昔に読んだので内容はうろ覚え。覚えてるのは、切り通し...海の音...騒騒騒...井戸...脳のような屋敷..髭顔の猶太人...そして骨...骨...骨... 読み出すとああ、そうだったそうだったと海の底から浮かび上がるように思い出す。伊佐間に降旗に白丘に朱実。 読んだ当時、いまいち切り通しに立つ脳髄屋敷のイメージがはっきりと湧かなかったのだが、読み直してもやはり難しかった。ネットで検索したら色々画像が出てくるから便利だねえ。なんとなく想像してたのとは大体合ってたから良しとしよう。 しかし、この狂骨。お馴染み志水アキさんで漫画化されてるのだけど(未読)果たしてどうやってるのだろう。物語のキモが絵にすることで全部わかってしまう気がするのだが... さあ次は鉄鼠の檻だ。いざ参る。
京極夏彦「魍魎の匣」再読了。 百鬼夜行シリーズ(通称京極堂シリーズ)では最高傑作であり、個人的にはこの物語は漢(おとこ)木場修の物語であると思っている。 個人的に1番好きなのは姑獲鳥なのだが、完成度では魍魎が1番だと思う。 箱、筥、匣...様々なハコに捉われた人々。それぞれは別の物語を描きながらも、幾重にも重なり絡まり合う。箱の中は外であり、箱の外は中である。木場修、久保、御筥様、美馬坂、須崎、加奈子、頼子...そして雨宮... 物語の中で京極堂が「この芝居は4幕、いや5幕構成になった」の通り。幕ごとに主役が、ハコが、入れ替わる。 そして最後の憑き物落とし。 ああ、なんて完成度なんだろう。 いま読み直してもすごい。 個人的に1番好きなシーンはやはり 御筥様の憑き物落としをしているシーンかな。 京極堂が奏でる反閇のリズムが聞こえてきそうなほど。だんっ!だん!!と。 そして何よりも1番印象に残るのは 「ほぅ」 ああ、向こう側に連れていかれそうだ...
京極夏彦「姑獲鳥の夏」再読了。 17年ぶりに刊行される京極堂シリーズ最新作「鵼の碑(ぬえのいしぶみ)」を読むために再読。 本屋に平積みされてた「姑獲鳥の夏」というタイトルと、パッケージデザインと、出だしの「どこまでもだらだらといい加減な傾斜で続いている坂道を登り詰めたところが、目指す京極堂である。」を見てひとめぼれ。 即買いして、家に帰って読み始めたら止まらなくなりそのまま徹夜で最後まで一気に読み終わった本。 当時、ミステリー小説と推理小説の区別もよく分かっておらず、推理小説といえば電車の時刻表でなんやかんやアリバイ作るやつだろ、嫌いと思っていたのでミステリーも嫌いと考えていたのだが、目から鱗。 なんじゃこれは、こんなに面白い小説がこの世にあったのかと衝撃を受けた作品。もう何から何まで好きな要素がてんこ盛り。 妖怪に量子力学に超能力探偵に陰陽師が詭弁を弄して憑物落としをするだあ。もう...好き!!ってな感じ。 そして徹夜で読んだので真夜中に後ろを何回か振り返ったよね。ホラー小説でもないのになんかぞわっとした思い出。 いや今読み返してもやはり色褪せず面白い。やはり大好きだなあこのシリーズ。 この姑獲鳥の夏は実相寺監督が映画化やつも結構好きだったんだけどなあ。観たくて配信検索したけど無かった。いつかもう一回見たい。 さあて、次はこのシリーズで1番の人気作「魍魎の匣」。いってみましょう。ほぅ。
北森鴻「桜宵」読了。 連作短編である香菜里屋シリーズ第2弾。今回は 「十五周年」「桜宵」「犬のお告げ」 「旅人の真実」「約束」の5編。 香菜里屋シリーズは基本なんとなく底辺に流れるもの悲しさというか切なさをはらんだ感じなんだけど、今回は特にそれを感じてしまったかも。とくにタイトルにもなっている「桜宵」のラストはちょっと納得できないかも。いやしょうがないんだろうけど、なんか主人公の感情に同意できないなあ。うーーん。 「十五周年」で出会った(出会わされた)2人が「約束」の中で上手くいっているのだけが救いかな。 さて、3作目の「蛍坂」にいくか、それとも一旦別のに行くか。悩みどこ。
三津田信三「犯罪乱歩幻想」読了。 久しぶりの三津田信三さん。 乱歩に絡むテーマ5編と、貞子(リング)とウルトラQのトリビュートが2編の全部で7編の短編集。 どれも全部面白かった。三津田さんはホラー作家なだけあって、やはり貞子トリビュートのやつはぞわっと恐ろしかったな。 乱歩トリビュートの中で好きなのは「夢遊病者の手」「魔境と旅する男」かな。 久しぶりに三津田さん読んだので、また刀城言耶シリーズ読み始めようかな。たぶん2作目ぐらいまでしか読んでないはず。
三津田 信三
高田大介「まほり 下巻」 高田先生の講義を聞いているような気になってくるほど、すごい考察であるし、難解。 日本書紀にしろ何にしろ記述された資料には、書いた者の時代的背景や人間関係に恣意性があるため、事実を記載したものなど存在しないし、それを読む人間も恣意をもって読むから、可能な限り全ての恣意性を排除して読むべきである。 民俗学とはなんと量子力学に似た世界なのだろうか。ある物体を観測するためには、光を当てたり叩いて音を聞いたりと、観測対象に何か影響を与えないと観測することができない。でもその行為が観測対象に影響を与えるから本当に純粋な姿は見ることはできないという。 でもこれって量子力学でも民俗学でも他の全てのことに当てはまるんだよね。完全な客観視などできないというね。 今回新たに気付かされたのは、史実を記述した資料などで事実を追うよりも、社会的に定められた法や規則などから事実が浮かび上がってくることもあるということ。 なるほど、周りに何が起こっているかを観測することで、中心にある事実が浮かび上がってくるのか。 そしてそれらから導き出される事柄から恣意性を可能なだけ排除し、因果関係などの邪推も除き、事実だけを論理的に組み上げた時に現れる真実。 「まほり」 その本当の意味が現れたときは鳥肌立った。 これだから高田大介はやめられない。 苦労して講義を聞き(読み)続けた甲斐はあったよ。 ああ、人生が何周もあるなら言語学の道と民俗学の道も量子力学の道もいってみたいなあ。人生50周ぐらいいるわこりゃ。
高田大介「まほり」読了。 図書館の魔女で大好きになった作家さん。図書館の魔女シリーズしか読んだことなかったので、違うお話はお初。今回はどうやら民俗学ミステリーらしい。おおお、大好きなパターンやんどれどれ。 さすが言語学者なだけあって、文章から言葉が好きなんだろうなというのが滲み出てくる。同じく言葉というか言語が好きな人間としてはとても好きな感じだ。といっても文章が読みやすすい訳ではなく、どちらかというと文は難解。でも文章に愛情を感じる。 そしてやはりこの人は文章を狙っている。頭が文字を読んで脳の中にイメージを思い起こすスピード感や間とかを意識して書いてると思う。 説明文のところは何度も読み返すぐらい難しいのに、山の中で女の子に出会うシーンとかは、映像を見てるかのように頭の中にイメージが湧く。すごいなぁ。 主人公の裕と、幼馴じみの香織の会話の感じがキャラクターは全然違うのにキリヒトとマツリカの関係を思い出してしまってくすぐったい。 今回はまだ上巻で話がどうなっていくのかまだまだわからないが、神社とかお寺、神仏習合、本地垂迹などなどすごい勉強になりながらも、閉鎖的な村の何とも言えない恐ろしさもあり、展開が楽しみである。 さあ下巻、いってみよう。
斉藤詠一「クメールの瞳」読了。 合わなかった。いや、これは俺が悪いかもしれない。パッケージデザインとあらすじと帯の文句から勝手に、オーパーツを巡った大冒険活劇のジェットコースター的怒涛のストーリー展開を期待してしまっていた。 違ごた。 どちらかというとこれは歴史ミステリーになるのかな。うーん。どうやってそのクメールの瞳が日本にやってきてどうやって隠され、主人公の手に託されることになったのかを、過去と現在を行き来しながら進むお話。なので意外と静かに淡々と進む。 最初からそのイメージで読めばよかったのに、大冒険活劇を期待したもんだからその落差がね。確かにあらすじと帯見ても大冒険活劇とは書いていない。だから俺が悪いのだ。 でもちょっとだけ苦言言うと、なんか伏線が伏線すぎるし、登場人物も怪しくない人は怪しくて、怪しい人は怪しくないと言うなんかこう、そのままというか、ねぇ。 表紙デザインは好きなんだけどなぁ。
斉藤 詠一
今村翔吾「イクサガミ 地の巻」読了。 物語加速!と共に面白さも格段に跳ね上がる。やはり天の巻は単なる序章だったか。いやはや面白い。天の巻に出てきた曲者たちはもちろんのこと、今回の地の巻から出てきたキャラも良い。 京八流の義兄弟達、武骨、カムイコチャ、ギルバートに忘れちゃいけない幻刀斎。それからまだどう絡むのかわからない仏生寺弥助...と見せかけてのおいおいそう来るのかよ。 出てきた登場人物みんな好きだが、今の所1番はギルバートかなあ。騎士道精神の塊でしかも滅法強いときたもんだ。 しかし登場人物に思い入れれば入れるほど、読む時のドキドキがひどい。だって殺し合いのゲームなのだもの。しかももうそのゲームも中盤過ぎ。強いやつしか残ってねぇ。 そして分かり始める黒幕。天の巻の1番最初にその目的は告げられていたが、今回の蠱毒を仕組んだ本当の目的がわかりだす.... いやーーーどうなるってとこで今回の地の巻終了。これ最終巻の人の巻って上中下巻ぐらいの3冊になるんじゃないの?いやむしろそれを望んでしまう。ああ、次巻早う!!
今村 翔吾
今村翔吾「イクサガミ」読了。パッケージデザインと帯の推薦文に面白センサーが働き即購入。2冊同時刊行で「天」「地」となってたからおそらく天地人の3部作ではなかろうかと。初めての作家さんだけどさてさてどうだろと読んでみたのだが... うん、こりゃあれだなんというかもうほぼ漫画もしくはアニメだ。それもジャンプだわ。小説読んでんだけど映像が頭ん中でバンバン流れるわ。ほんでサクサク読める。腕に覚えのあるものを一堂に集め、首に一点を示す木札を配り、京都から東京までの点取り合戦。 通過点に関所があり、進めば進むほど点数が必要。主人公もやむなくこのゲームに参加するが、参加者の中に怯えているが確たる意思を持って参加している少女を見つける... ほら、もう、ね。王道でしょ。そして王道はやっぱり、面白いんだよ。とりあえず天を読み終えたけど、まあ曲者たちがわんさと出てきます。今回は序章だからまだまだ傑作とは判断できないけど、とりあえず続編に期待できるかな。いやしかし、今回の最後の無骨と右京の戦い... カバーデザインは石田スイさんでなかなかカッコイイデザインなんだけど、漫画化するのならやはりバジリスク書いたせがわまさきさんかなぁ。今村翔吾さんは山田風太郎賞も取ってるみたいだし。とそんな妄想は置いといて。 いざ地の巻へ!!
京極夏彦「書楼弔堂 破暁」再読了。 次作を買ったのだが、前がどんな話だったか全くもって忘れていたので読み返し。 基本的に構図が京極夏彦のデビュー作である京極堂シリーズと同じ。関口くんを少し明るくし、京極堂から少し毒気が抜けた感じかな。だがやはり、その構図は心地いい。 「この世に不思議なことなど何もないのだよ関口くん」と京極堂はいう。 「この世に無駄なことはない、世を無駄にする愚か者がいるだけ」と弔堂の主人はいう。 京極堂シリーズでは次々と殺人事件が起こるミステリーだけど、今回の書楼弔堂シリーズでは、人は全く死なず。様々な道に迷える有名人が己のための一冊を勧められる。そんなお話。 相変わらずの京極夏彦節でだらだらと詭弁が続く。それを読みたくて京極夏彦を読んでるのだからまあ間違いはない。 あぁ、どこかふらっと歩いてたら「弔」とかかげた本屋がないかなあ。 さて次作。だれがでてくるかな。
北森鴻「香菜里屋を知っていますか」読了。 香菜里屋シリーズの最終巻。いつもながら北森鴻さんの連作短編集はいいなあ。今回の5つの話、どれも好きだが、5つの中では背表紙の友が1番好きかな。いい話だ。 そして最後は香菜里屋シリーズ最終巻として華やかな北森鴻オールスターズ。雅蘭堂に冬狐堂に蓮杖那智まで。工藤に幸ありますように。 しかし読み終わってしくじりに気づいた。香菜里屋シリーズである桜宵を読んでないじゃないか。買わなければ!
梶尾真治「思い出エマノン」読了。地球が誕生してから30億年の記憶を生まれ変わりながら継承していくエマノン。彼女に出会う人たちが紡いでいく連作短編集。鶴田謙二さんのイラストがエマノンの雰囲気に抜群に合っててとても魅力的。エマノンに出会う人たちは、SF好きの青年、超能力者たち、ニュースキャスターと様々。それぞれの短編のストーリーも面白くとても魅力的な作品なのだが、一点だけ難点が。文体が自分に合わない。なんだろう、とてもサクサクと読めて読みやすい文体なのになんか肌に合わないというか。エマノンは全く問題ないのだけど、エマノンに出会う人々のキャラクターの喋り方とか情景描写の仕方とかがなんかうーーんってなるんだよなあ。でもストーリーは面白いんだなあこれが。悩ましい。エマノンシリーズは5作品ぐらいあるから最後まで読みたいのだが。ゆっくり読んでいくか。今回の短編の中ではニュースキャスターの話が1番好きだったかな。
梶尾真治
北森鴻「花の下にて春死なむ」読了。 ビアバー香菜里屋に集う人たちの人達の悩みをバーのマスター工藤が話を聞くだけで解き明かすアームチェアディティクティブ物。 6つの短編の登場人物が少しづつ重なり全体通すとなるほどという風になっている。 やはりこういった連作短編好きだなあ。 探偵役である工藤の人柄が店の雰囲気同様、人の気持ちに溶け込むように謎も凝り固まった心も解きほぐす。香菜里屋で工藤の出すビールと料理を味わってみたな。謎を持ってないからダメかな。 6つの話の中では、マグロ男の話だけがちょいと異質な感じがしたが、あとの5つは相変わらずの短編の妙手北森鴻。面白かったな。次作も入手済み。楽しみだ。
北森 鴻/郷原 宏
澤村伊智「ずうのめ人形」読了。 比嘉姉妹シリーズ第二弾。リングを彷彿とさせる都市伝説の話。リングのオマージュ的な要素もあるのかな。都市伝説で行くとリカちゃん人形とかも入ってる感じ。うん。面白かった。 澤村伊智さんの書く文章はとても性に合っててスラスラと入ってくる。あと情景描写の感覚が妙に合う。 この比嘉姉妹シリーズは映像でも観たいのだが、今回のこれはちょっと映像化難しいかもしれないなあ。あとやっぱり琴子が好きなので、もっと琴子に出てきてほしかった気もするのだが、彼女は忙しいからしょうがないね。 あとなぜかこのシリーズを読んでいると、荒俣宏のシムフースイシリーズを読みたくなる。もっかい買い直そうかな。
道尾秀介「カエルの小指」読了。前作「カラスの親指」を再読したばかりなので、愛すべき登場人物たちにすぐ会えたのは嬉しい限り。(1人だけ会えないけど)。解説に書かれていたけど、道尾秀介さんもカラスの親指の続編作る気なかったそうだけど、この登場人物たちに会いたくなったから今回の作品が生まれたそう。うん。わかる。(偉そう) 今回はその愛すべき前回メンバーに新たに1人追加される。 その追加された1人に振り回されるメンバーだが、最後はやはり結束して大仕掛けを開始するってお話。 前回も感じたのだが、読み進めていくと、ああやはり続編だから1作目のドキドキ感ほどではないかなと思ってたのだが... やはりそこは流石道尾秀介。やってくれる。 これこれ!やっぱりこの作家はすげえ!!(前回も同じこと言ってる)ってなるのよ。道尾秀介の真骨頂だね。うん。 そしてまた、その後が気になる....
道尾 秀介
澤村伊智「ぼぎわんが、来る」読了。 映画「来る」の原作。映画を先に見てしまったやつは、映像や配役のイメージが先についてしまうから本来は読まないのだが、どうやらこの原作比嘉姉妹シリーズで続きがあることを知り、俄然興味がでた。 そう、比嘉姉妹に会いたいのである。 映画では比嘉姉妹の姉、琴子を松たか子が演じていたのだが。すごい。松たか子=琴子ドンピシャだわ。本読みながら松たか子で再生されるけど抜群。かっこいいなあ。 結構原作通りに映画できてるのね。でも映画オリジナルの部分のクライマックスのぼぎわん退治のとこ。映画上手く作ってたなあ。あのシーン大好きだから、原作読み終わった今、もう一回映画見ようかなって思ってる。 澤村伊智さんは初めての作家さんだったけど、文体はすごく読みやすかった。キャラクターも魅力的だし。こりゃ続編期待できるな。 さて次は「ずうのめ人形」楽しみだ。
道尾秀介「カラスの親指」読了。というより再読了。カラスの親指の続編である「カエルの小指」が出たので復習のためにもう一回。 随分昔に読んで内容をほとんど忘れてるんだけど、めちゃくちゃ面白かった記憶。 なのだが、読み進めていくとやはり2回目の所為かあれこんなものだったっけ感。 まあ昔と今で年齢も変わってるからだいぶ感じ方も変わったのかもなと思いつつこの話のクライマックスである詐欺の大仕掛けへ。 そうそうこんな感じで詐欺を仕掛けるんだよなあと記憶が蘇ってからのもうラストまでの驚きね。 これこれ!やっぱりこの物語はすげえ!!ってなるのよ。やっぱめっちゃ面白かったっていう感想は間違いなかったわ。年齢のせいじゃなかった。道尾秀介の真骨頂だね。うん。 ということで復讐は終わった、いや違う、復習は終わった。カエルの小指を読む準備は万端だ。
宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」読了。 王様のブランチで紹介されてた本。テレビで紹介されると途端に買う気失せる天邪鬼気質&ハードカバーは買わない主義の2つを押しのけてまで読んでみたいと思ってしまったやつ。初めて読む作家さん。最終的に買うのを決めたのは最初の1行。 「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」 掴みはバッチリだ。途中でM-1に挑戦する場面も描かれるので、やはりこの作者さんも掴みをわかってるのであろう。しっかり掴まれてしまった。 冒頭は成瀬を見守る幼馴染み島崎の目線で成瀬の生き様が語られる。この島崎がまたなんかいいのである。島崎と同じように成瀬の生涯を見守っていたいと言う気持ちになる。 そう思ってしまうほど、 成瀬が実に魅力的なのである。 「200歳まで生きる」とか「M-1に出る」とか突拍子もないことを言うのだが、実に大真面目なのである。 成瀬はいう 「いろんな種を蒔けば、ひとつでも花が咲くかもしれない」。 島崎はいう「それはホラ吹きである」 でもそのホラの行く末を見たくなっちゃうんだよね。わかるよ島崎。 話は島崎からの視点だけではなく、 いくつかの視点で語られる。 文体が軽快でリズム良く読めるので、 ほぼ一気に読み終わってしまった。 ひとつのいい映画を見終えた感じ。心地よい。
北森鴻 浅野里沙子「邪馬台」読了。 蓮杖那智フィールドファイルシリーズの4作目でシリーズファイナルである作品。というよりもこれ以後は読めなくなってしまったと言った方が良いのか。本作の3分の2ほど作者である北森鴻さんが亡くなってしまったからだ。残りの3分の1を公私共にパートナー(後書によると結婚の約束までしていたという)である浅野里沙子さんが、残されたプロットのメモを頼りにみて書き上げたという。 今作はタイトル通り邪馬台国の謎に民俗学の観点から迫るミステリー、というよりも北森鴻的邪馬台国考察といったほうが良い気がする。蓮杖那智曰く「邪馬台国は無かったのかもしれない」。その言葉の意味が解き明かされていく。なるほど、そういう考え方もあったのかと感心させられる。 あと、内藤三国の活躍の場がやっときたのも嬉しい限り。まあいつも後少しというとこで爪が甘く、合理性に欠けてしまうのところも可愛らしくもあったのだが。よかったよかった。 ああ、でももう蓮杖那智は会えないのか。蓮杖那智フィールドファイルシリーズとしてはやっと第一部が終わったと言った感じなのに。
北森鴻/浅野里沙子
上坂あゆみ「老人ホームで死ぬほどモテたい」読了。 SNSでたまたま流れてきた屁の投稿で初めて知り、気になったので調べてみると、なるほど短歌を書く人なのね。短歌とか高校の時にあの人がサラダが美味かった日のことぐらいしか知らなかったのだが、どれどれと試しに... と何首か読んでみると、 これがおいおいちょっと、いいじゃないの短歌。 この人の言葉、持っておきたい と、10代かと思うような恥ずかしい感情が生まれました。そんな訳で多分人生初めて、短歌の本を購入してしまった。 三十一文字(みそひともじ)という言葉も久しぶりに思い出したなあ。そうか、三十一文字の中ってこんなにいろんなこと詰め込めて表現できるんだ。面白いな、短歌。 短歌集なので本一冊の中の文字数は圧倒的に少ないはずなのに、なんか小説読むぐらいに時間かかってしまったのはひとつひとつの歌が濃厚すぎるのもあるのだろうか。 人の生きてきた過程を三十一文字の言葉で紡いでいく。なんだろうこの感じは。それこそ言葉にできないけど凄い。 一首目からこれだもの。 「ばあちゃんの骨のつまみ方燃やし方YouTuberに教えてもらう」 この一首目に呼応するのがこの本の最後の一首なのだろうと勝手に思っている。強いな、この人。全体読むと弱いんだけど、芯にあるのは強さだと思う。さあ気になる人は買いましょうね。はい。 ああでも、こういう才能を見ると凄いという感情と同時に悔しいという感情も芽生えるから不思議だ。ちきしょうめ。
上坂あゆ美
城平京「虚構推理 短編集 岩永琴子の密室」読了。 今回は密室にまつわる短編が5篇。いつもながらにやはり全て面白い。主人公である岩永琴子の嘘も交えたいくつもの謎解きの合理性には舌を巻く。 もともとが幽霊や妖怪がいる前提で、その幽霊や妖怪達からの困りごとを解決するためなのだから人間にその謎を怪奇の存在なしに説明するには嘘を混ぜる必要がある。今回はその嘘の混ぜ方が絶妙。やはり虚構推理という名は伊達ではない。 五篇の中でもやはり秀逸なのは本の裏表紙のあらすじにも書かれていた飛鳥家の殺人。謎解きを聞き終えた依頼者の2人が最後に導き出す答えははたしてどちらなのだったろうか...おれなら...
城平 京/片瀬 茶柴
夢野久作「人間腸詰」読了。 表題含む8つの短編集。 「人間腸詰」 「木魂(すだま)」 「無系統虎列刺(むけいとうこれら)」 「近眼芸妓と迷宮事件」 「S岬西洋婦人絞殺事件」 「髪切虫(かみきりむし)」 「悪魔祈祷書」 「戦場」 夢野久作の特徴であるおどろおどろしく怪しい話ばかり。とはいえ今回の短編集は少女地獄とか瓶詰地獄とかの文学的な感じというよりも、どちらかというと探偵小説寄りな感じを受けた。特に近眼芸妓とS岬西洋婦人のやつ。もしかして初期の頃の作品なのかなと思い検索してみたが、逆に後期の方だった。なんか驚き。初期の方がもっと幻想的だったんだ。 しかし今回の短編集で1番驚いたのは最後の解説。昔の解説ってこんなに辛辣だったんだ。解説の最初からもうこの短編集は玉石混合と言い切るんだもの。特にこれとこれの2篇は石だって言い切ってんのすごかったな。いやもちろん褒めてもいるんだけどね。解説にはっきり石(つまらん)と言ってるのって今ではありえない気がする。 とりあえず読み終わってひとこと... じゃぱんがばめんふぉるもさううろんち わんかぷてんせんすかみんかみん
夢野久作
「銀河鉄道の父」 映画化するということで本屋さんに平積みされててるのを見て知り、宮沢賢治が好きなのでやはりこの本は外せないと思っていたのだが、門井慶喜さんは読んだことなかったし、ぱっと見の印象、なんだか真面目で固そうな話かもしれないなと思ってたので、買うまでに少し時間がかかった本。 ところがどっこい、これは..... めちゃめちゃいい。 なんといっても父である宮沢政次郎が可愛い。父として厳格であるべきと、厳格に振る舞おうとするがどうしても我慢できずに賢治を甘やかしてしまうところなどとてもかわいい。 そして宮沢賢治のイメージがガラリと変わってしまった。アメニモマケズカゼニモマケズの詩のように、物静かで清貧で農民のために全てを投げ打ってみたいなイメージだったのだが、いやいやどうして、そこに至るまではなかなかの甘たれ坊主だし金持ちの子でぼんぼんだったとは知らなかった。 さらに妹であるトシのイメージもがらりと変わる。宮沢賢治の有名な詩、永訣の朝での「アメユジュトテチテケンジャ」とはかなく病床で呟く姿しかなかったが、いやいやどうして、賢治を超える才女で文才も素晴らしかったときた。 読んでみてわかるが、この本は宮沢賢治の父の話などではなく、宮沢政次郎の話である。厳格な父であろうとした男の話である。その男は、とても魅力的で愛情が深かった。一読の価値あり。 P.S.そんな男を役所広司が演じるだとう。これは映画が楽しみでしかない。そして100%泣く自信がある。だって本の時点で泣いてるんだもの。
門井 慶喜
夢野久作「ドグラマグラ 下巻」読了。 上巻では若林先生のターンだったのが、今回は正木先生のターン。正木先生が映画仕立てで説明する若林先生の資料。この資料が続くところで心折れた人も多いことだろう。特に警察の調書のような調査記録と如月寺縁起のあたり。どうしてこういう文書って小難しい言葉で並べたてるんだろうね。ワザと読みにくくしてるような気がする。とはいえ、やはり夢野久作の文章の多様さには驚く。こういう文体も、論文の形も、はてはお寺の縁起まで作り上げてしまう。すごいなあ。 この若林博士と正木博士のそれぞれの研究資料をじっくりととくとくと丸め込まれるように叩き込まれながら二人の戦いに巻き込まれていく主人公。果たして俺は呉一郎なのか違うのか。そりゃ狂っちまうよ。ああー、チャカポコチャカポコ。 あと呉一族が読むと気が狂ってしまうという巻物、もともとのネタあったよなと調べたら、九相図絵巻だね。ははあ、小野小町だったんだ。ドグラマグラの中では6つにしたのはなにか意味があるのだろうか。うーむ。研究の余地あり。 そして2回目読み終わって気づいた。時計の音は12回鳴ってるのね...ブゥーーーーーーン...
夢野久作「ドグラマグラ」読了。 というより、再読了かな。言わずと知れた日本三代奇書のひとつ。20代の頃に読んで大好きになった本。 巻頭歌「胎児よ胎児よなぜ踊る 母親の心がわかって おそろしいのか」という不穏な感じで始まるこの物語。 この上巻はアンポンタン・ポカン博士と正木敬之先生の論文のような形をとった「脳髄はものを考えるところにあらず」「狂人の解放的治療場」「心理学的遺伝」「胎児の夢」という内容が半分以上を占めている。そしてその全ての論旨が立て板に水のように流れて記憶を無くした主人公同様あれよあれよという内に終わってしまう。 のだが、いやいやどうして。 この立て板に水のように流れる論文たちが一癖も二癖もある癖に妙に魅力的で納得させられてしまうのだよ。人間とは脳で考えてるように見えて実は人体を形成しているすべての細胞で考えており、脳はただの電話交換手なのであるとか、胎児は母のお腹の中にいる10ヶ月のうちに地球に生命が誕生した時から人間になるまでの夢を見ているとか、嘘みたいだが否定できない内容なのである。 そんなお話が初版が昭和51年。西暦では1976年。45年前に書かれているという驚き。いやはや未だに圧倒される。 そしてこのアイデアにも増して全体的にこの小説の面白さを引き上げてるのが、文体のリズム。スラスラと身体に入ってくる。人によってはこのリズムが合わない人もいると思うが、この夢野久作が作る文体のリズムが自分にとってとても心地よいリズムなのである。 さあ果たしてこれらの内容が一体主人公とどう関わりあるのか。いざ下巻へ(といってももう全部内容知ってるんだけどね)
北村薫「ヴェネツィア便り」読了。 帯に書かれている言葉では「時と人を描いた15の短編小説」とある。 この15の短編の中でも特に印象の残るのはホラー的なお話の「開く」、不思議な能力を持った「岡本さん」、ぞわりとした怖さの「黒い手帖」、そしてタイトルにもなっている時を超えて私に届いた手紙「ヴェネツィア便り」かな。 そう、北村薫さんの書くお話で怖い話もあるんだけど、なんというか「ぞわり」という言葉が1番しっくりくるんだよね。今回の短編集は怖い話ばかりじゃなく、切なかったりあったかかったりするお話もあるんだけど、読後に印象に残ってるのはやはり「ぞわり」としたやつだな。特に「開く」。これからは閉じてるものがあったらなるべく簡単に開けないようにしようっと。 あ、唯一「ヴェネツィア便り」だけは怖いやつではなく、自分もそういうことやっておけばよかったなあと、なんか暖かくなるというか、くすっと笑ってしまうというか、いい感じだった。最後がこのお話で良かった。
北村 薫
山田風太郎「八犬伝 下」読了 なんか一気に読んでしまった。 一気読みさせる力があるねこの物語は。 上巻の感想では書かなかったけど、 この山田風太郎の八犬伝は、八犬士の活躍を描く虚の部分と、実際にそれを書き進めている滝沢馬琴の実の部分とが交互に章立てされる構成になっている。 上巻では虚の部分の八犬士の活躍の面白さに圧倒されながら、実の部分がちょうど箸休めな感じでほど良かったのだが、下巻を読み進めるうちに、なるほど山田風太郎が描きたかったのは実はこれだったのだなと腑に落ちる。 うん、虚実含めて面白かった。 でも人によってはこの八犬伝、もっと八犬士の丁々発止という活躍を見たいという人には合わないのかもしれないな。 うーむ、しかしこれどのように映画化するのだろうか。楽しみだな。
山田 風太郎
山田風太郎「八犬伝 上」読了 実は山田風太郎さん初めて。これまで甲賀忍法帖とかの忍者のシリーズはアニメとか漫画とか映画とかで観てたけど、山田風太郎さん自体を読んでなかった。のだが、八犬伝を書いてるとは知らなかった。小学校の頃に南総里見八犬伝を映画館で見て、おもしれーこれと思って学校の図書館で滝沢馬琴の南総里見八犬伝を読み耽った身としては、この作品を読まないわけがない。しかも映画化されるという。楽しみだ。 と言うことで前置きが長くなったが、上巻を読んだ感想。 素晴らしく面白い!! なぜ今まで読まなかったんだろう。 できれば神田伯山に講談やってほしいぐらい。 安房国の里見義実の城がまさに落ちんとするとき、八房へ敵の首を取ってこいと命じる義実と止める伏姫!!の序章から始まり、仁義礼智忠信孝悌八つの玉が飛び散る。その筆致がすばらしい。一気に小学校の頃の気持ちに戻ってわくわくする。そして泣く。仁義に泣く。八犬士はもちろんのこと、八犬士に関わる人々の想い、犠牲、嗚呼...浜路...房八...おぬい...力二...尺八...涙なしには読めねえ いかん、物語に引っ張られて江戸っ子口調になっちまう。 上巻は八犬士の7人目毛野が登場したとこで終わる。くはぁ!良いシーンだ! はやく!はやく下巻を持って来いってんだ!
瀬名秀明「ポロック生命体」読了。 AIにまつわる4つの短編集。 「負ける」「144C」「きみに読む物語」 「ポロック生命体」の4篇。 瀬名秀明さんはパラサイトイブから好きで、ブレインバレーもめちゃめちゃ好きだったなあ。 今回のテーマはAI。将棋、小説、絵画と芸術性の高いものに関して、AIはどこまで人類に近づけるか、もしくは人類を越せるのかと言った内容。 4篇の中ではやはりダントツに「ポロック生命体」が面白かった。確かに人間はピークの時ってのが必ずある。ずっとピークのままでいる人間は存在しないか、もしくは短命で終わってしまうのかもしれない。それに比べてAIはいつまでもピークのままでいられる。うーーん。考えさせられるなあ。そしてその未来はもう近いところまで来ているのかもしれない。 でもどうなのだろうか。AIがとんでもない傑作小説を書いたとして、それを普通に受け入れられるのだろうか。というよりおれは買うだろうか...
瀬名 秀明
横田順彌「平成古書奇談」読了。 横田順彌さんは何か一冊読んだ覚えがあるのだが なんだったかなあ。 さて今回の小説は古書にまつわる連作短編。 連作短編は好きな方なのだが、 うーーん、これはちょっと自分には合わなかったなあ。なんだろ。本のあらすじにもある通りいろんな短編のなかにSF、ホラー、ファンタジーの要素が散りばめられてるんだけど、特にこのホラーが唐突すぎておいおいおいってなっちゃった。 このホラーの話だけでも外した方が良かったのではないかな。全体的にほんわかした暖かい感じなのにこれだけが特に浮いている。 あと連作短編というと短編が続く中に全体を通したテーマみたいなのが大体の場合あるんだけど、この作品にはなかったのがもひとつハマらない理由だったかな。ううむ。なんか惜しい。 全体としては嫌いじゃないのになあ。
横田 順彌/日下 三蔵
筒井康隆「口紅から残像を」読了。 ずいぶん久しぶりの筒井康隆。 20代の一時期ハマって読み漁っていた作家さん。なのだがこの口紅から残像をは未読だった。しばらく前にネットで話題になった作品なのでどれどれと手を出してみた。読み始めて「ああこの文体、この感覚、これぞ筒井康隆だ」と懐かしく、そして少しあの頃をら思い出してしまった。若かったなあ。 閑話休題 内容はとても実験的な内容。 短い話が一つ終わるごとに、 だいたいひとつ文字が文章から消えていく。 そしてその文字を使っていた物体や人物も字がなくなることで存在できなくなったら消えてしまう。 そういうとあっという間に話が終わりそうだが、そこが日本語の面白さ。自分を指す言葉一つとっても、わたし、おれ、わたくし、われ、自分、小生、おのれ、ぼくなど様々な読み方がある。そこに筒井康隆さんの言い回しの上手さが絶妙にミックスされ文字が消えてるのに本の半分以上進むまであまり違和感ないほど小説が成り立っている。 これはすごい。 もしかしたらこの小説、 日本語だから成り立つのだろうか。 いややはり筒井康隆の腕あってこそなのだろうな。 こういう実験的な内容も含めた また筒井康隆だなあと。 うん、久しぶりの筒井康隆。 感想はやっぱりこの人面白い。
筒井 康隆
北森鴻「旗師 冬狐堂 瑠璃の契り」読了。 3作目同様、今作も短編集。 そしてやはり冬狐堂シリーズは短編の方が好きだなあ。今回は 倣雛心中(ならいびなしんじゅう) 苦い狐 瑠璃の契り 黒髪のクピド の4篇。 陶子が芸術家を目指していた若い頃が描かれたり、プロフェッサーDとの関係性がわかったり 、信頼のおける友人硝子の過去も少しわかったりとまだまだ今後いくらでも続けていけるのではないかと思えるこのシリーズなのだが。今回で最終巻。もう続きが読めないとは寂しいな。他の蓮杖那智のシリーズとかそのほかにもちらりと出てるらしいのでそこで陶子に出会えるのを楽しみにしよう。
森博嗣「銀河不動産の超越」再読了。 だいぶ昔に読んで面白かった覚えがあったんだけど、内容忘れてしまったので再読。そして改めて面白さを実感。あと何故だかわからないけど、泣きそうになる。いや実際泣いた。なんでだろ。多分この本読んで泣くっておかしくない?って言われそうだし、何がそんなにこの本面白いのっても言われそうな気がする。でもなぜだか俺の琴線には触れてくるっていうか琴線ぎゅーーーって掴まれてるような感じになる。主人公が自分の感覚に似ている部分があるからなのかな。全ての人にお勧めはしないけれども、再読してとてもとても大好きな本になってしまった。心があったかくなる。もし映画化されるとしたらぜひ荻上直子さんで映画化して欲しいなあ。
森 博嗣
北森鴻「旗師 冬狐堂 緋友禅」読了。 前2作は長編だったか、今作は短編集。 陶鬼 「永久(とわ)笑み」の少女 緋友禅 奇縁円空 の四篇。 うん、蓮杖那智フィールドファイルシリーズもそうだけど、短編集の方が好きかもしれない。 4篇とも面白かった。 古美術とか贋作とかの話というと漫画のギャラリーフェイクを思い出す。ギャラリーフェイクも好きだったから、このシリーズが好きじゃ無いわけないよね。 四篇の中では奇縁円空が本の半分を占めるほどの長さがあるのだけど、タイトルは緋友禅の方なのね。まあ確かにカバーデザインを考えると緋友禅の方が映えるか。でも円空も面白かった。ああこの冬狐堂シリーズもあと一冊になってしまった。少し寂しいな。蓮杖那智シリーズの最後「邪馬台」とどっちを先に読むか悩む。贅沢な悩みだ。
城平京「虚構推理 逆襲と敗北の日」読了。 大好きな虚構推理シリーズの新作。 なのにこの俺としたことが去年の12月に刊行されていたにも関わらず買っていなかったという失態。チェック不足だったぜ。 さて、今回はどんな難題が岩永琴子に降り掛かるのかと言うと、キリンの亡霊が山中に現れ、山登りに来ていた若者4人のうち3人を崖から落として殺したといった内容。 気を衒ったように見えるお話だが、なぜキリンの亡霊が山中に出るのかもしっかりとした設定があり、謎の解決までしっかり楽しめた。 が、今回のはいつもより謎解きが意外とあっさりとしてたなと感じていたのだが、ふむふむ、最後そう来たか。いいねえ。 これまでの巻で琴子と九郎は恋人同士ということだったが、琴子に対して九郎はなぜかつっけんどんにしていた。その理由が語られる。 今回のクライマックスはここだね。 うーーーん、良い。 今まで九郎にはそんなに肩入れはなかったのだが、うん。九郎、いいぞ。かなり好きになった。 次の巻も楽しみだ。
北森鴻「写楽・孝」再読了。 蓮杖那智フィールドファイルシリーズの第3作。 民俗学ミステリー短編集。 今回は 憑代忌(よりしろき) 湖底祀(みなそこのまつり) 棄神祭(きじんさい) 写楽・孝(しゃらく・こう) の4編。 ほんとこの蓮杖那智フィールドファイルシリーズはシリーズを増すごとに面白さが増していく気がする。 前作から蓮杖那智と助手の内藤に佐江由美子が追加され、掛け合いが3人になったのだが、それが意外と楽しい。あと、教務課の狐目の男がだんだんと存在感を増してきて、タイトルにもなっている写楽・孝ではほぼメインになっているというね。笑。 しかしほんとに民俗学というのは面白い。 柳田國男の遠野物語も大好きなのだが、やはりここは折口信夫も読むべきか。
北森鴻「触身仏」再読了。 蓮杖那智フィールドファイルシリーズの第2作。 民俗学ミステリー短編集。 今回は 秘供養(ひくよう) 大黒闇(だいこくやみ) 死満瓊(しのみつるたま) 触身仏(しょくしんぶつ) 御陰講(おかげこう) の5つの短編。 1作目も面白かったのだが、 この1作目より2作目の方が蓮杖那智と助手の内藤のキャラが確定してきた感じもあり、面白さがぐんと上がった感がある(偉そう)。 後書きにも書かれていたが、シャーロックホームズとワトソンのようでやはりこの2人の関係性は安定するのだなと思う。 そして、なにより民俗学に対する考察が楽しい。今回は5つとも面白くて、どれが一番って決めれないなあ。といいつつやはりタイトルにもなってる触身仏かな。手塚治虫の火の鳥にも少し似た話がでてくるけど、土の中から鈴の音が聞こえてくるのはそれだけでとても怖い気がする。子供の頃に聞いたら絶対トラウマになるわ。チリーン。
北森鴻「凶笑面」読了。というか再読。 この本は蓮杖那智フィールドファイルシリーズの第1作で、民俗学をもとにしたミステリー。 民俗学者である蓮杖那智が相棒?の内藤と共に、 民俗学のフィールドワークをするなかで、さまざまな事件に巻き込まれていくという連作短編。 今回は 鬼封会(きふうえ) 凶笑面(きょうしょうめん) 不帰屋(かえらずのや) 双死神(そうししん) 邪宗仏(じゃしゅうぶつ) の5つの短編。 この中の双死神がこないだ読んだ 冬狐堂シリーズの「狐罠」で話がつながっていると書いていたので気になって最初から読み直してみたというわけ。 たしかに内藤からみた狐罠だ。なるほど、おもしろいなあ。そして税所コレクションはまだ続きがあるとな。こりゃ全部読み返してから続きを読まねばだ。ふむふむ。 そして読み直してやはり、 このシリーズは好きだ。まあもともと民俗学とか好きだからこのシリーズが好きにならないわけがないんだけどね。 5つの中では邪宗仏が好きかな。 「聖徳太子はキリストだった」という蓮杖那智の呟きから始まるお話。諸星大二郎の生命の木を彷彿とさせるお話。一番最初のページに「諸星大二郎先生の妖怪ハンターに捧ぐ」との言葉があるので確実に生命の木を意識してるとは思う。蓮杖那智は短髪の女性なのになぜか稗田礼次郎の容姿を想像してしまうのもそのせいだろな。
大好きな本がまた1冊増えた。 「本にだって雄と雌があります」 小田雅久仁 タイトルで惹かれて、 帯の森見登美彦という名前で惹かれて、 裏表紙の粗筋を読んで即決。 結果、大当たり! 内容はタイトルの通り、 本にも雄と雌があって、本棚の本を不用意に入れ替えると子供ができるので、無限に本が増えるから大変ですよと。 で、その勝手に増えた本を幻書と呼び、 それを収集する祖父の話を自分の息子に伝える手記という形の小説である。 大好きな本と書いたけど、 あくまで私にとってという意味です。 これは恐らく万人受けしない。 何故なら文章がみっっっつり詰まってるから。 読んでてなんだか素潜り大会してるような気分になります。 文章の海にざぶんと潜って潜って潜って辛抱堪らんくなってブハッっと空気を吸いに上昇する。 でもそれが堪らん。 森見登美彦が好きな人は多分好きと思うから是非読んだ方がいいと思います。 ああ、この作者は本が好きなんだろうなあと言うのが滲み出てます。 そして、出てくる全てのキャラクターが愛おしい。 祖父である與次郎もその妻ミキも宿敵シャックリも。 特に最初の方は読んでて思わず吹き出してしまうぐらいだ。 本を読んでて吹き出したのってどれぐらい振りだろう。 んでまた読み終わってしまうのが惜しいと思う本を読んだのもどれぐらい振りだろう。 最初の方は素潜りに慣れていないので慣れるまでに時間が掛かったが、 途中からは、 ああ、もう半分も読んでしまったという哀しさが混じり出す。 面白い本というのは、楽しいという感覚と共に哀しみも包含するから不思議だ。 余談だが、うちの嫁は凄く好きな本に出会うと読み終わりたく無いので読むのをやめるという特異体質の持ち主だ。 話が逸れた。 本の中盤は與次郎の戦争体験の部分になるので少し重たいんだけど、 最後のあたりになる最初の方の話と繋がってああそういう事になってくのかと読んでて涙が出た。 まあ私は涙脆いからすぐ泣くんだけど、 なんだろう、夫婦愛だなって。 そんないい本なので、万人には勧めませんが、本が好きな人には是非勧めます! もし映画化するとしたら、 細田守とかにやって欲しいなぁ。
小田雅久仁
北森鴻「旗師 冬狐堂 狐闇」読了。 旗師とは古美術を売買する者の呼称。 主人公は宇佐美陶子。 骨董の競り市で競り落とした青銅鏡。 その青銅鏡が盗品であったことから始まる 古美術にまつわる謎と歴史のミステリー。 なのだが、 ミステリーとはいうもののこの作品は、 主人公の宇佐美陶子が名探偵のように 謎をズバズバ解いていくわけではない。 仲間と一緒に罠に嵌められた敵を倒す感じに 近いかな。その仲間の1人に蓮杖那智(れんじょうなち)がいるのだが、 この人は別の作品の民俗学に絡む 謎を解き明かしていく主人公。 北森鴻さんはこっちのシリーズで読み始めて、 それから現在の冬狐堂シリーズを読み始めた。 蓮杖那智のシリーズにももちろん宇佐美陶子が 出演する。 北森鴻さんの作品はどうやら色んなシリーズの キャラクターが全てに絡んでいて 大きな作品の流れを作ってるようだ。 なんか全部読んでみたくなってきた。 さて、今回は冬狐堂シリーズの2作目。 毎回だが宇佐美陶子さんが満身創痍になりながら戦う。芯の強い人だからどんなに苦境に立たされても負けぬという安心感はある。 うん。今回も面白かったなあ。 やっぱり北森鴻さんは面白いわ。 この人がもうこの世にいないなんて信じられないな。もっとはやくこの人の本に出会いたかった。 さて次は「緋友禅」と「瑠璃の契り」 と、その前に蓮杖那智フィールドファイルの 双死神を読見返そうっと。この狐闇と話が重なってるみたいなので。
北村薫「野球の国のアリス」読了。講談社ミステリーランドとして刊行された小説の文庫版。「かつて子供だったあなたと少年少女のための」とのコンセプト通り、中学生ぐらいに戻ったような気持ちになってしまった。タイトル通り、野球大好きな少女アリスが鏡の国に迷い込んで大活躍するという話。とても楽しくあっという間に読み終えてしまった。やっぱり北村薫さんの文章、好きだなあ。
「奇譚蒐集録」読了。 清水朔さん2作目。 前回は沖縄の方だったが 今回は北海道。南から北へ。 北海道といえばアイヌ。 今回のテーマはアイヌ民族をテーマにしたお話。 前作同様、やはり最初の方が とっつきにくい印象なのだが 中盤から後半にかけて 物語が動き出すと面白い。 どちらかというと前作よりこっちの方が好きかな。 廣章と真汐の過去の出会いと、 現在の関係性、真汐の心情を揺さぶる人物の登場。 それによって2人の関係性が深まるのもいい感じ。 そして物語全体を覆う悲哀。 どうして人は異なるものを拒否するのだろうか。 異なるってだけなのに。 しかしやはり民俗学はいいなあ。 人生が何遍でもやれるのなら 民俗学の道を行くのもありかもしれない。
北村薫「遠い唇」読了 7つの短編集 遠い唇 しりとり パトラッシュ 解釈 続・二銭銅貨 ゴースト ビスケット 今回はテーマが「謎解き」 北村薫さんが得意とする 日常に潜む謎。 特にパトラッシュなどは 普段生活しててありえるような謎だったりして 一瞬ぞくりとさせられる (女性視点でのお話だったけど) 続・二銭銅貨はご存じ江戸川乱歩の代表作 二銭銅貨の続編があったらというお話。 素晴らしい出来だった。 うん、一読の価値あり。 あと北村薫さんの作品は 読み終わると少しだけ切なくなる。 特にタイトルにもなっている遠い唇。 切なすぎる。 全部面白かったなあ。 ちなみに北村薫ファンならわかると思うけど、 ゴーストは八月の六日間の主人公の 心を描いた作品で、 ビスケットは冬のオペラの巫弓彦がでてきます。
貴志祐介 新世界より 下巻 読了 うん。面白かった。 と言っていいのだろうか。笑。 上中下巻とかなりのボリュームあったけど ほぼ一気に読み終わった感。 反乱を起こしたバケネズミたちは ほんとに悪者なのだろうか 読み進めながらずっと胸に突っかかっていたものが 最後に紐解かれる。 うん。 人間とは、バケネズミとは 分けるものは何か、 隔てるものはなにか、 本当い分かり合えないのか、 さまざまな感情を呼び起こさせる作品。
貴志 祐介
新世界より 中巻 読了。 守られた街から抜け出して 世界の真実を知り始める。 果たして守られていた世界は 正しかったのだろうか 真実とはなにか... 物語は加速していく。 さあ下巻。 いざ参る。
「新世界より」上巻読了。 貴志祐介さん久しぶり。 というか「黒い家」を随分昔に読んだっきり。 上中下巻からなるだけあって この上巻は半分ぐらいが世界観の説明。 前半の章「若葉の季節」でその世界観を きっちり描いて 後半の章「夏闇」から物語が動きだす。 起承転結の起承まで。 ようやく面白くなってきたかなって ところで終わってるので、 評価するのは最後まで読んでからにしよう。 いざ中巻へ...
四畳半サマータイムマシン読了。 四畳半神話大系大好き。 サマータイムマシーンブルース大好き。 大好きと大好きが合わさって 好きじゃない訳がないっ!! 大好きだわぁ。 サマータイムマシンブルースのストーリーに 私、小津、明石さん、樋口師匠、羽貫さんの 四畳半神話大系のメンツが暴れ回る。 もう楽しさしかない。 あ、そうそう どっちの作品も好きなので 冷静な判断はできておりませんので その辺はご了承ください。 最近、本読むスピード遅くなったなあと 思ってたんだけど、 これはあっという間に読み終わってしまった。 楽しいひとときだったなあ。 しかもこれが9月に劇場公開という。 どう映像化されるのか楽しみでしかない。 うん。絶対面白い。 解説読んでわかったけど、 森見登美彦さんから上田誠さんに 四畳半の登場人物をサマータイムマシンブルースに登場させたいと持ちかけたらしいそうな。 ほんで書き上げたこの小説を 映画版で上田誠さんが脚本にするという もう訳がわからないこの状態。 まさにサマータイムマシンブルースっぽい。 うーーーーん。 楽しい。
森見 登美彦/上田 誠
夢見る帝国図書館 読了。 中島京子さんは初めての作家さん。 小さい家を映画ではみたことあるってぐらい。 でも小さい家の映画良かったなあ。 閑話休題 中島京子さん。文体がとても読みやすく スラスラと読める。 大きな波もなく、 静かに物語は進むのだが、 なぜか惹かれる。 登場人物たちがそうなように それはやはり喜和子さんの魅力なのだろうか。 喜和子さんがどういう人だったのか もっと知りたいと思い ついつい先を読んでしまう。 それとリンクするように進む 夢見る帝国図書館のお話。 このお話は一体誰が書いたものなのか。 もしかしてほんとに図書館自体が 自分で作り出した夢なのだろうか。 そして、最後の1行。 この1行で泣かされてしまった。 そんな本でした。
中島 京子
寝ずの番 中島らもを久しぶりに読みたくなって 2冊購入。 まずはこれから。 内容は短編集で、 本のタイトルにもなってる寝ずの番は 映画化もされてる。 だいぶ昔に映画は観て 映画館でめちゃめちゃ笑った覚えがある。 まあしかし下品。 らも節全開。 でもそれが面白いんだなあ。 寝ずの番 えびふらっと・ぶるぅす 逐電 グラスの中の眼 ポッカーァン 仔羊ドリー 黄色いセロファン とあるけど、 黄色いセロファンが一番好きかな。 さて、次はこどもの一生読もっと。
虚構推理短編集 岩永琴子の純真 読了。 やっぱこのシリーズ大好きだわ。 オカルトと論理的な推理とのブレンドさ加減が絶妙。 普通のミステリだと 論理的な推理だけなのだろうけど、 真実だからといって全て人が納得するものではないと言うところもだし、それを虚実入り交ぜながら、詭弁を弄し、でも人が納得しうる結論を導く。 その話の持って行き方が 抜群にうまい。 カバーデザインのアニメちっくな感じで 手を出していない人がいるなら いますぐその偏見を捨ててくださいと言いたい。 この虚構推理シリーズ。 間違いなく面白いです。
森見登美彦「熱帯」読了。 面白かった。 全5章と後記でなりたってるのだけど、 最後の4章の途中からは一気に読んでしまった。 読み終わった今、 千一夜物語がとても読んでみたくなっている。 今回のお話は、 読み進めるにつれ、 物語の深みへ深みへと どんどんもぐっていく構造。 その引き込み方がうまい。 そして、最後まで読んだときの感じね。 大好きな小説、ドグラマグラとも 通じる部分がある気がする。 森見登美彦さんといったら 夜は短しとか、有頂天家族とかの 明るく楽しくわくわくする感じの小説と、 夜行とか狐の話みたいな すこしゾワっとする感じのものと 2パターンあるんだけど、 今回のはそのどちらとも違った そしてどちらでもあるような 不思議なお話。 やっぱ森見登美彦さん好きだなあ。
森見 登美彦
6月に映画があるので急いで履修。文体が短くとんとんと読みやすい。声に出して読みたくなるやつ。
古川 日出男
やっぱりこのシリーズは面白いなあ。特に今回は大好きな夢野久作のドグラマグラを扱ってることもあり楽しかった。またドグラマグラ読み直そうかな。
タイトルで惹かれて買った本。清水朔さんは初めての作家さん。文体としてはずっと入ってくる文体ではなかったけど、面白かった。2作目に期待。
中野のお父さんシリーズの第二作。