塗仏の宴(宴の支度)
京極夏彦
講談社
作品紹介、あらすじ
昭和二十八年春。小説家、関口巽の許に奇怪な取材依頼が齎された。伊豆山中の集落が住人ごとに忽然と消え失せたのだからという。調査に赴いた関口に郷土史家を名乗る和装の男が嘯く。-「世の中には不思議でないものなどないのです」。男が現出させたこの世ならざる怪異。関口は異空間へと誘われるのか?六つの妖怪の物語で、「宴」の「支度」は整い、その結末は「始末」にて明らかとなる。
感想やレビュー
京極夏彦「塗仏の宴 宴の支度」再読了。 絡新婦の厚さで懲りたのか、この百鬼夜行シリーズは「宴の支度」と「宴の始末」のシリーズ初の分冊。持ち歩くこともギリ可能になったので読み終わるのも少しだけ早かった。 内容は正直かなり忘れていた。うっすらした記憶ではシャーロックホームズでいうモリアーティみたいな奴が出てきたよなぁぐらい。そして当時は、そのイメージのせいでこれまでのシリーズの中でイマイチな印象だった本作。 ...のはずだったのだが、約20年ぶりぐらいに読み直して見ると、いやこれちゃんと面白いじゃないか。うん。 この宴の支度は、支度というだけあって6編の短編集の形。そしてそれぞれ妖怪の名前のタイトルと共に主人公が変わる。 「ぬっぺっぽう」関口 「うわん」朱美 「ひょうすべ」京極堂(関口) 「わいら」敦子 「しょうけら」木場修 「おとろし」織作茜 これがどれもいい。特にいいのが「おとろし」。織作茜がとてもいい。老獪なジジイとの駆け引きも、多田羅との会話も、津田の仮面を剥ぎ取るところも、いい!いいぞ!織作茜!!っとなってきたところへの....ああ!!そう、そうだった...関口...お前はぁ.. ということ興が乗ってまいりました! さて宴を始末しに参りましょうかね。