バナナ剥きには最適の日々
円城塔
早川書房
作品紹介、あらすじ
どこまで行っても、宇宙にはなにもなかったー空っぽの宇宙空間でただよい続け、いまだ出会うことのないバナナ型宇宙人を夢想し続ける無人探査機を描く表題作、淡々と受け継がれる記憶のなかで生まれ、滅びゆく時計の街を描いた「エデン逆行」など全10篇。円城作品はどうして「わからないけどおもしろい」のか、その理由が少しわかるかもしれない作品集、ついに文庫化。ボーナストラック「コンタサル・パス」を追加収録。
感想やレビュー
円城塔「バナナ剥きには最適の日々」 円城塔。名前は知っていたが読むのは初めて。確か若くして亡くなった作家さんが未完で終わった小説を引き継いで完成させた人ぐらいの知識。 解説によると円城塔の小説は「わからないけどおもしろい」と言われてるのだそうな。 確かに。 文章自体はとても読みやすく、一文一文は全て理解できるのに、全体を通すとわからなくなる。ただ、完全にわからないのではなくなんとなくはわかる。これが「わからないけどおもしろい」と言われる所以か。 言葉遊び、思考遊び、円城塔の夢の中に紛れ込まされたような感覚。それが好きかどうかなのかな。そして、どちらかと言えば好きである。 今作は表題含む10編の短編集。 全部が全部好きではなかったが、個人的に好みで行くと表題作の「バナナ剥きには最適の日々」と「equalのⅢとⅣ」と「捧ぐ緑」が好き。 「バナナ剥き」はバナナ星人が3枚皮と4枚皮に分かれてて、自分がどちらだったのかは死んでから剥いてみないと判別できないというのは面白かった。 「捧ぐ緑」はこれで一本小説が書けるような気がする。 1番わからなかったのが「墓石に、と彼女は言う」かな。何回読んでも難しかった。 うん、でも総じてやはり わからないけど、おもしろかったな。