元高校球児の作者ならではのリアリティが随所に光った小説。
野球部の描写はほとんどなく借景となっているのだが、そこの設定がおざなりになっていないからこそ、母親たちの物語が地に足のついたものとなっている。
母親たちの雰囲気が良くない代の学年が、横暴な三年生になったり、その横暴な三年生に対抗する形で下の学年が結束して良い雰囲気となったり…本当にあるんだろうなあ。
息子の航太郎は試練目白押しの野球部生活だったが、一貫して同級生には恵まれていることに、読者としてはほっとする。
だんだん大阪弁に染まっていく航太郎の描写がこれまたリアル。ところどころ違和感のある大阪弁が散見されたが、作者が神奈川出身であることを考えると、頑張ったな、と思う。