1(ONE)
加納 朋子
東京創元社
作品紹介、あらすじ
大学生の玲奈は、全てを忘れて打ち込めるようなことも、抜きんでて得意なことも、友達さえも持っていないことを寂しく思っていた。そんな折、仔犬を飼い始めたことで憂鬱な日常が一変する。ゼロと名付けた仔犬を溺愛するあまり、ゼロを主人公にした短編を小説投稿サイトにアップしたところ、読者から感想コメントが届く。玲奈はその読者とDMでやり取りするようになるが、同じ頃、玲奈の周りに不審人物が現れるようになり…。短大生の駒子が童話集『ななつのこ』と出会い、その作家との手紙のやり取りから始まった、謎に彩られた日々。作家と読者の繋がりから生まれた物語は、愛らしくも頼もしい犬が加わることで新たなステージを迎える。
感想やレビュー
あまり駒子シリーズに思い入れがないヘタレな読者だが、加納朋子の新作となれば読まないわけにはいかない。 レイちゃんが主役の前半部分が圧倒的に好きだ。 内向的で不器用な女の子を書かせたら、本当に加納朋子は巧い。こういうのを読みたかった!と快哉をあげるレベルである。 反対に、これまでの駒子シリーズらしさをもっと出さなければ、という奮闘のあとが見られる後半部分は、その制約があるせいか、なんとなく停滞した印象を受けた。 それにしても、大昔に駒子シリーズは全部読んだはずなのだが、全く記憶にないのはどうしたわけか…。