トヨタ 中国の怪物 豊田章男を社長にした男
児玉 博
文藝春秋
作品紹介、あらすじ
満州で生まれ、27歳まで中国で育った服部悦雄。大躍進運動、文化大革命下の中国で、零下20度の小屋での一人暮らし、原生林の強制労働と、日本人ならではの苦難を経験する。帰国後、トヨタ自動車販売(現・トヨタ自動車)に入社。豊田英二、奥田碩に重用されてみるみる頭角を現すが、やがて、奥田vs.創業家の御曹司、豊田章男の対立に、図らずも巻き込まれてゆく…。
感想やレビュー
服部悦雄氏のインタビューが出発点のルポなので、トヨタの内部事情については相当のバイアスがかかっている。トヨタについてのルポとしてはぎりぎり及第点というところ。 この本の価値は偏に、服部悦雄という稀有な経歴の男を紹介したところにある。 留用は知っていたし、その拘束期間が思いの外長かったことも知っていたが、まさか文化大革命までそのまま留まっていた留用者家族がいたとは思わなかった。 中国国籍を持たない者の生きづらさは、残留孤児とは全く種類が違うのだということにはっとする。 個人的には、もう少し丁寧に服部氏の家族について掘り下げてほしかった。彼の幼少期に少なくない影響を与えたであろう兄がいつの間にか死んでいてびっくりした。 久々に『中国人として育った私』を読み返したくなった。