NIEさんの感想、レビュー
非常に良い本だった。あまり期待しないで読みはじめた。田舎暮らし、時代的な鬱屈さや社会構成に縛られた中で、ペスト禍が起こる。その中での混乱や、恐怖、すがる気持ちや、攻撃的な行動も、なんとも手にとるように分かる。後から、平和なさなかであれば、そういった行動や人間の営みを馬鹿らしいと一笑に付すこともできるだろうが、コロナ禍を経験した人たちは決してそうはできないだろう。人間とはどうにも愚かでひたむきな、そういう生き物だ。今どきの若者は、だとか、人間の性質が変わったかのような物言いもあるけれど、ある種私達はこの年代から、何も変わってないんだろう。それを進化のない愚かさだと取るか、人間讃歌に通じるものだと取るかは人それぞれだろう。その変わらなさに、私はなぜだか安心したし、彼らがそうでも生き永らえ、この時代まで綿々と引き継がれているものがあると考えれば、希望はまだあるようだ。 主人公のアンナに拍手を。