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灰色の季節をこえて

灰色の季節をこえて

ジェラルディン・ブルックス/高山真由美

武田ランダムハウスジャパン

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作品紹介、あらすじ

1665年春、イングランド中部の村がペスト渦に襲われた。村に腰を落ち着けたばかりの仕立て職人が、首にできた瘤から悪臭を放って死んだ日が始まりだった。すべてを燃やせ!-仕立て職人の遺した言葉も村人は聞く耳を持たなかった。まもなく病は燎原の火のように広がりはじめた。18歳の寡婦アンナの家も例外ではなく、幼い息子二人をたちまち死神が連れ去った。底知れぬ絶望と無力感に覆われた村では、やり場のない怒が人々を魔女狩りへと駆り立て、殺人事件さえ起きた。アンナが仕える若き牧師夫妻は近隣に疫病が広がるのを防ぐために、村を封鎖してこの地にとどまり、病に立ち向かうよう呼びかけた。だが、有力者一族は村を見捨てて立ち去り、死者はとめどなく増え続ける…。史実をもとに、巧みなストーリーテリングと瑞々しい感性で綴られる、絶望と恐怖、そして再生の物語。著者を歴史小説界の頂点に押し上げた記念すべきデビュー長篇。

感想やレビュー

非常に良い本だった。あまり期待しないで読みはじめた。田舎暮らし、時代的な鬱屈さや社会構成に縛られた中で、ペスト禍が起こる。その中での混乱や、恐怖、すがる気持ちや、攻撃的な行動も、なんとも手にとるように分かる。後から、平和なさなかであれば、そういった行動や人間の営みを馬鹿らしいと一笑に付すこともできるだろうが、コロナ禍を経験した人たちは決してそうはできないだろう。人間とはどうにも愚かでひたむきな、そういう生き物だ。今どきの若者は、だとか、人間の性質が変わったかのような物言いもあるけれど、ある種私達はこの年代から、何も変わってないんだろう。それを進化のない愚かさだと取るか、人間讃歌に通じるものだと取るかは人それぞれだろう。その変わらなさに、私はなぜだか安心したし、彼らがそうでも生き永らえ、この時代まで綿々と引き継がれているものがあると考えれば、希望はまだあるようだ。 主人公のアンナに拍手を。

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