NIEさんの感想、レビュー
中々楽しめた。北村薫の本だから外れるなんて思ってなかったけど。 読み終わると、ああそうこの静かな文体が北村薫だなあと感慨深かった。中学生時代にスキップなどを読んだことを懐かしく思う。水面のような静かさで波紋が広がっていくような文体はとても穏やかで気持ちがいい。 主人公は40代になろうかという独身の女性。この年齢がなんともいい。華々しくもないが人生達観するにはまだまだ早すぎる。女性にとっては、時に想像する未来、もしくは過去の自分だ。 人生の大部分は大きな出来事で大きく何かが変わるわけではない。ただ毎日の繰り返しが続いていく。その中で、少しずつ疲れたり、何年も前に抱えた古傷が時折痛んだりする。人間は誰しも何かが欠けている。欠けている隙間を人は埋めたがる。その隙間を埋めたものでまたその人が彩られていく。 それを垣間見させてくれる小説だった。