下巻。
月子の友人真紀や恭司の恋愛や生い立ちなど、それほど主題に絡んでこないエピソードが多いです。
殺人に疲れた浅葱はこれ以上の殺人をやめようとする。iはそれを許さず、今度は友人孝太を殺すように指示を出す。孝太を守ろうとする浅葱は、月子の友人である片岡紫乃を殺す。iは即座に川﨑幸利を殺し、次にまた狐塚孝太を殺すように指示を出してくる。
このタイミングで月子は浅葱が罪を犯していることに気づく。浅葱を問い詰める月子。浅葱は月子を殴打し、大きな怪我を負わせる。
浅葱は、iと落ち合う予定のトンネルに向かい、そこでiに右目を潰されるという重傷を負わされる。
発見され病院に運ばれる浅葱。落ち着いてから浅葱を訪ねる孝太。
孝太と浅葱の話し合いから、iは浅葱の別の人格であることが判明する。本当の兄の藍はとうに浅葱に殺されてなくなっていた。ストレスから解離性人格障害に陥っていた浅葱。
(また、最初にiとして浅葱に接触してきたのは、かつて論文のコンテストで大賞をとった上原愛子であった。兄を騙って浅葱に近づいていた愛子も、ショックから浅葱に殺される。ちょっといらないエピソードであったかも。)
最後にもう一つどんでん返し。論文を書き、月子や孝太と交わるなど日常生活を送っていた浅葱(θ)は、分裂して生まれた人格の方であった。元からの浅葱の人格(i)は長く眠りについていた。元の浅葱に目をさされたθのパーソナリティはもう姿を現さない。
最後の説明を終えた浅葱は、しばらくして移送中に脱走する。月子の入院している病院に面会して現れ、月子に最後の挨拶をして姿をくらます。
主人公が誰なのか、入り組んだ人間関係などもあり、少し話が入り組んでいて、話の全体像がわかりづらいです。そして、なぜ人格分裂後の浅葱が人を殺していたかの動機も不明確なままです。世間を憎んでいたとは言え…。
そう言った意味で少し残念な作品となっています。