大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が念頭にあったので、バイアスはかかったが登場人物や出来事が頭の中で整理されて読みやすかった。
久しぶりに近代日本文学を読んだが(太宰治をそんなふうに大雑把にくくってよいかは置いておいて)、一文の長い独特の文調が心地よかった。
近習は果たして「信頼できる語り手」なのかずっと疑問だった。実朝が亡くなってから20年近く経っている上、語り手の近習は実朝をかなり慕っているようだから、彼の語る実朝像は美化されているのではないかと思う。
終盤の、語り手の近習と公暁との会話が生々しくて良かった。公暁の語る実朝像も、もちろん偏ったものであると思うけど、実朝には確かにそういう面もあるのではないかと感じた。
「鉄面皮」も面白かった。「人間失格」に通ずるところもあって、太宰治の繊細さが伝わってきた。太宰治は、人間の弱いところ、上手くできない心にすっと染み込む中毒性があるとあらためて感じた。