チェリーネネ🍒さんの感想、レビュー
宮沢賢治は、父、政次郎に何かとつけて金の無心をする息子。そんな賢治は、妹、トシの病気を機に筆をとり、多くの素晴らしい作品を書き始める。 印象に残ったフレーズ 「そもそも『春と修羅』という本の題そのものがトシがらみだ。政次郎には、そんな気がしてならなかった。なぜなら『無声慟哭』あたりの詩句から見るに、ことに『修羅』の語が、もうトシのいない世にひとり生きなければならない胸のいたみを示している」 賢治がいかにトシのことを愛し、大切にしてきたかが分かる。 別の本で、『春と修羅』の「あめゆじゅとてちてけんじゃ」のエピソードを聞いたことがあったから、トシの命運を既に知っていて、読んでいて心苦しかった。 昔は、今よりも衛生状況が悪かったのか、息子・娘に先立たれることも多い。政次郎も、苦しかったのではないか。 この本を読んで、宮沢賢治の自分の中でのイメージが変わった。クールで賢い人物なのかと思ったが、なんだか暴れん坊だし、いつまでも親の脛をかじっているし、案外同じ人間なのだな、と安心した。また、兄弟がこんなに多いと知らなかったので、トシの聡明さや、清六の穏やかさが、賢治と対比されてより浮き上がってきた。 それぞれの人物にそれぞれの良さがあるから、より「家族らしさ」のような、自分達との共通性を見出せた。