チェリーネネ🍒さんの感想、レビュー
高校生の亜紀は、一年前に仲違いしたまま死んでしまった姉を許せずにいた。 そんな最中、突然姉を名乗る人物からLINEが届く。また、姉、春香のルームメイトだったという奈津が、亜紀の家に居候することに。奈津と過ごすうちに、封じ込めていた思い出の扉をこじ開けられ、春香との思い出を取り戻していく。 この本を読みながら、私は号泣してしまった。亜紀の、「奈津の言っていることは正しいと思うけれど、姉との思い出を振り返るのは怖い」という気持ちが痛いほど理解できたし、それが家族や奈津本人に理解されない孤独さ、苦しみもよく伝わってきた。 私も、自分自身の考え方が人に伝わらない孤独さを感じているからこそ、亜紀の苦しみが共鳴して、ここまで心を動かされたのかな、と思う。 印象に残ったフレーズ 「時間は二度と戻ることはなく、これも幻になってしまうの?」 亜紀と春香の心の叫びだと思う。 亜紀は、春香を傷つけた罪悪感にずっと支配されていたけれど、本人に直接会って、きちんと謝って、「心の手当て」ができた瞬間だ。 春香も春香で、「絶対に守る」と約束した最愛の妹を傷つけたことがずっと心残りだった。でも、花火を見ながら亜紀が許してくれたことを悟り、「本当に幸せな夢だった」と語っている。 やっと分かり合えたのに、春香はもうこの世にいない。「この時間がずっと続けばいいのに」後から振り返れば、きっとこと体験すらも「夢」「幻」と言われてしまう。それが苦しかったのだと思う。 この本の中で、亜紀は、春香とわかり合っただけでなく、父親や、妹の冬音とも分かり合えたと思う。特に父にも、同じように悲しみの根源を無かったことにして、きちんと向き合わなかった経験があって、だからこそ心の底から、亜紀の気持ちがわかるというのが驚いた。 誰でも、表に見えているものが全てではないから、きちんと向き合って、時にぶつかり合うことが必要なんだな、と感じた。