yamaのエンタメ雑記さんの感想、レビュー
yamaのエンタメ雑記
一切のドラマ性を排除して描写と比喩だけを駆使しベトナム戦争最前線を疾走する人間達の行動・心理を書き連ねる。動物の如く蠢く亜熱帯の森林が目に浮かぶよう。敵襲を受け死の淵に立たされても呻き声一つ挙げない兵士を横目に遁走する“私”の自尊心崩壊の瞬間。
開高健
壮大な出鱈目を書くスタミナは凄いが、小説の緊張感は弱かった。幾らか表現の繰り返しが気になったし、ユタカというキャラクターや種明かしの方法含め、第三部はもう少しハラハラさせて欲しかった。悪くないが陰翳が薄いので迫真さがない。
桜庭一樹
自分とは全く違う世界を視る住人と物語を共にした時の独特の感情。これが小説を読む醍醐味。始めから終わりまで存分に味わった。主人公よ特性が守口、悦子、小暮、父親といったピース達に彩られてこんなにも美しく世界の断片を活写するとは。
西加奈子
日本人にとって“西洋的”神が不在という事実はどんな影響をもたらすのか。転向とは信仰心とは倫理とは罰とは。ドラマチックな展開に唸らされつつも、基督への愛とその沈黙に絶望するパードレ、良心の呵責を感じない己を不気味に思う戸田。
遠藤周作
遠藤 周作
秀作短編集。優れた小説にはユーモア感覚と詩的精神が存在すると再確認。『朽助のいる谷町』の老人の感懐、『掛持ち』の強情なオウメ、『女人来訪』の妻の鮮やかな嫉妬と男女のリアル感。コミュニケーションの為敢えて口論をする逆張り的仕掛けと秀逸な地の文。
井伏鱒二