山椒魚改版
井伏鱒二
新潮社
作品紹介、あらすじ
老成と若さの不思議な混淆、これを貫くのは豊かな詩精神。飄々として明るく踉々として暗い。本書は初期の短編より代表作を収める短編集である。岩屋の中に棲んでいるうちに体が大きくなり、外へ出られなくなった山椒魚の狼狽、かなしみのさまをユーモラスに描く処女作『山椒魚』、大空への旅の誘いを抒情的に描いた『屋根の上のサワン』ほか、『朽助のいる谷間』など12編。
感想やレビュー
秀作短編集。優れた小説にはユーモア感覚と詩的精神が存在すると再確認。『朽助のいる谷町』の老人の感懐、『掛持ち』の強情なオウメ、『女人来訪』の妻の鮮やかな嫉妬と男女のリアル感。コミュニケーションの為敢えて口論をする逆張り的仕掛けと秀逸な地の文。