Bookstand
Bookstand

まるやまさんの感想、レビュー

明日の光が見えないほどの絶望感に満ちた冒頭は、読んでいるだけで落ち込んでしまうような臨場感と現実感、表現力であった。母に捨てられたことを恨みながら生きていた千鶴は、自分の不幸を全て母のせいにする未熟で浅慮な人間であったが、若年性アルツハイマーを患う母を取り巻く恵真、彩子さん、その娘美保、医師の結城と生活をともにすることで、人間らしく意地汚く成長する様は、猛烈に引き込まれる魅力のある文章であった。彼女らもそれぞれに自分なりの問題を抱えており、母の病気と向き合いながらそれを克服していく様子は、最終的にはすっきりできる起承転結だったと思う。母と千鶴の関係値や他の登場人物の抱える心の問題も、かなり良好に描かれており、明るく希望的な終わりを迎えられてすっきりとまとめられていた。

まるやまさんの最近の感想、レビュー

App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう