まるやまさんの感想、レビュー
終始気味が悪い。最初から最後まで答えはないし、どこの世界線の物語なのかわからない。読者に考察させるために敢えて背景は伏せているのか。作者が伝えようとしていることは一体何なのか。信じるものが違えばどんなおかしな理論・常識にも順応する人間の醜悪さを描いているようにも見えない。主人公(?)佐藤の一人称視点で描かれているが、普通ではない気持ちの悪い思考が生来のものなのか環境要因なのかが最後までわからなかった。他人の行動を分析的に観察して気味の悪い解釈をしたり不可解な疑問を持つのは何故なのか。未来の催眠のストーリーも、作中ではずいぶんと"普通"らしい真夏の監督した舞台のストーリーも気味が悪く意味もわからないが、なんとも引き込まれるような、怖いもの見たさを刺激するものであった。読んでいるうちに読者であるこちらも思考が破綻して頭がおかしくなりそう。この作品がなんたるかの1ミリも分からなかったが、何故だか頭に残る印象的で芸術的な作品。