デトロイト美術館の奇跡
原田 マハ
新潮社
作品紹介、あらすじ
ピカソやゴッホ、マティスにモネ、そしてセザンヌ。市美術館の珠玉のコレクションに、売却の危機が訪れた。市の財政破綻のためだった。守るべきは市民の生活か、それとも市民の誇りか。全米で論争が過熱する中、一人の老人の情熱と一歩が大きなうねりを生み、世界の色を変えてゆくー。大切な友人や恋人、家族を想うように、アートを愛するすべての人へ贈る、実話を基に描かれた感動の物語。
感想やレビュー
ページ数が少ないだけあって、読み応えとしてはあまりない印象。ただ原田マハさんの別の作品でもそうだったが、マダム・セザンヌを一度見てみたい、どんな作品なのか興味を抱かせることはとても上手だなぁと感じた。この方はアートを愛しているんだろうな ということがよく伝わってきた。家に1つ自分の好きな絵画を飾ってみたいと初めて思ったのは、この作品のおかげだと思う。
DIAが市民のシンボル的存在だったことが伝わった。住み慣れた土地に誇れるものがあるのは素晴らしい。
フレッドは、妻が亡くなった後もデトロイト美術館所蔵のセザンヌの妻「オルタンス」にしょっちゅう会いに行っている。美術館の所蔵品が、デトロイト市の財政破綻によって売却されるかもしれない、となった時に500ドルの小切手を握りしめ、チーフキュレーター、ジェフリーに会いに行った。 一人の市民がチーフキュレーターを動かし、裁判官の心をも動かした。 寄付を集めることで、コレクションも年金受給者も救ったと言う話。 デトロイト市民フレッド、コレクションの基となる作品を集めたタナヒル、チーフキュレータージェフリーの三人の観点から書いている点が興味深い。 裁判官クーパーの「グランドバーゲン」と言う考えが形となり、目標額を達成できた。 フレッドのような市民がいることを誇りに思う、あなたがいてくれたからこそ奇跡は起こったというジェフリーが、彼に伝えた言葉にこの話の総てが集約されていると思う。