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高瀬庄左衛門御留書

高瀬庄左衛門御留書

砂原 浩太朗

講談社

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作品紹介、あらすじ

神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。五十歳を前に妻に先立たれ、俊才の誉れ高く、郡方本役に就いた息子を事故で失ってしまう。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかし藩の政争の嵐が、倹しく老いてゆく庄左衛門を襲う。文学各賞を受賞した珠玉の時代小説。第9回野村胡堂文学賞/第11回「本屋が選ぶ時代小説大賞」/第15回舟橋聖一文学賞/「本の雑誌」2021年上半期ベスト10第1位。

感想やレビュー

読み始めは、お正月に晴れ着の袖に腕を通した時の様な、ひんやりとするけれど、背筋が伸びる心地がした。読後感は、凛と張り詰めた冬の冷たい空気の中に一輪の梅が咲き誇り香しく匂い立つ春の訪れの様に思えた。定められた身を流されながらも、時に抗い、ままならなさを嘆き、悔い、罪を背負い、様々な想いを抱えつつも、不条理という刀をいかにして己という鞘に収めるか。人の世を生きるということは、こういうことなのかもしれない。

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