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あとは切手を、一枚貼るだけ

あとは切手を、一枚貼るだけ

小川 洋子/堀江 敏幸

中央公論新社

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作品紹介、あらすじ

かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。失われた日記、優しいじゃんけん、湖上の会話…そして二人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密にどこであなたは気づくでしょうか。届くはずのない光を綴る、奇跡のような物語。

感想やレビュー

幻想的な言葉の羅列は、夢の中への招待状のようで、読者は非常に明確な言葉なのに、あやふやな事実の上を歩かされているように感じる。それがここちよいかどうかは好みだと思う。 思い出話と現在が入り混じり、そこに架空の話や見聞きしたものも区別されることなく、なんの分類もなく陳列されたショーケースのような手紙は、他者のプライベートな領域を人の手紙を盗み見る神になったような万能感を打ち砕く。いったい何の話をしているのか分からず、陳列された出来事の価値がわからないから。それでいて、いけないことをしているという罪悪感を引き起こす。私にはわからない二人の秘密の会話を盗み聞きしていることを知らしめるから。 可愛がっていた姪を海にさらわれ、授かっていた子ども我が子とするのを諦めた妻と、その妻と別れ、我が子を姪として育てた夫の書簡は、妻の生が終わるまで続く。 小さな事実を想像しながら読むのは、色褪せた写真を捲るかのようだった。

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