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博士の愛した数式

博士の愛した数式

小川 洋子

新潮社

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作品紹介、あらすじ

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていたー記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

感想やレビュー

記憶が何度リセットされても、寛容に慕情を持って博士に接する家政婦とその息子と、何度記憶を失っても大切な部分を決して忘れないよう努力する博士との関係性に心暖まる。何度記憶がなくなろうとも博士と2人が過ごした時間は愛情に溢れ、暖かな木漏れ日のような日々だったのだろう。

1

事故により80分しか記憶がもたない博士と、その家政婦として働く私とその息子ルートの温かくて寂しいお話。前日の記憶はなくなり、毎日が初対面の私とルートに対して、数学を通して美しい繋がりを見出す数学への憧憬と、またルートと私に対する分け隔てない博士の接し方には、記憶がなくなるからこそ人間本来の慈しみに溢れているように思う。毎朝記憶障害の事実を自分のメモで知る博士の悲しみと、その生活や身なりを気にしない博士に対する他人の接し方を読み進めていくことで、私たちが当たり前に思って生きていることへの懐疑を感じずにはいられない。起承転結が大きくあるわけでないのに、深く印象に残るストーリーだった。

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