ニックネームが設定されていませんさんの感想、レビュー
推理小説を読むのは初めてで、帯の「最後に予想外のどんでん返しが!」という煽りを見て、読者をそのトリックでどれだけ翻弄してくれるのか!と期待して読了してみれば、推理小説ではなくサスペンス小説でござった。 推理要素はほぼなく、基本的に後出し情報で物事が進展していく。 黒幕もよくある、良い奴ぶってた奴が悪かったオチ。それも大それた計画も悪事もなく、本当にタダの小悪党。 行き当たりで保身に走ってるだけの人。 もちろん意外感も全くなく、コイツだろうなーと思ってたらコイツだった。 ラストを期待して読み始めただけにそこの不完全燃焼感は否めない。 それでも最後まで読めたのは、サスペンス小説としての面白さは確かにあったから。 冤罪事件をモチーフにした話だが、それに関わる警察組織の隠蔽体質だとか、冤罪被害者遺族の悲痛な声とか、冤罪をでっち上げてしまった当刑事の懊悩とか、小説で感じたことがあまりない生々しさがあった。 冤罪を作ってしまった主人公の刑事が、その罪と一生向き合いながら、二度と同じ過ちを起こすまいと邁進して、数十年が経ち、辣腕の刑事になってからの安心感はヒーロー物に通ずるものがあり、ちんけな警察官を切って捨てる様には爽快感もあった。 総評としてはサスペンス好きには刺さるんじゃないだろうかと言ったところ。 刺激を求めている人には薦めない。 ☆4
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