香君 下 遥かな道
上橋 菜穂子
文藝春秋
作品紹介、あらすじ
「飢えの雲、天を覆い、地は枯れ果て、人の口に入るものなし」-かつて皇祖が口にしたというその言葉が現実のものとなり、次々と災いの連鎖が起きていくなかで、アイシャは、仲間たちとともに、必死に飢餓を回避しようとするのだが…。オアレ稲の呼び声、それに応えて飛来するもの。異郷から風が吹くとき、アイシャたちの運命は大きく動きはじめる。
感想やレビュー
植物の香りを材材にして繰り広げられる壮大な作品。着眼点が凄い。 オアレ稲という架空の植物を通して、帝国繁栄の継続の難しさ、香君と皇帝との関係、帝国と藩王の関係を上手く取り込んでいる。 作者の入念な準備、練り上げられたストーリーにどんどん引き込まれていく。
生物たちが香りでコミュニケーションをとっていることを軸に紡がれた、とても深い物語だ。 アイシャの母親の故郷であり、オアレ麦をもたらした世界はどんなところなのか、何故そことの行き来ができないのか、そこに新たな物語を見てしまう。