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記憶屋II

記憶屋II

織守きょうや

KADOKAWA

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作品紹介、あらすじ

高校生の夏生はかつて、友人達と一斉に、記憶を失うという不可解な経験をしていた。夏生を訪ねてきた猪瀬という新聞記者は、それは彼が追っている「記憶屋」の仕業だという。忘れたい記憶を消してくれる、記憶屋。夏生は、その行為が悪いことだとは考えていなかった。だが記憶屋の正体が親友の芽衣子ではないかと疑われ、夏生は彼女の無実を証明するために猪瀬の記憶屋探しに協力するが…。切ない青春ミステリ、待望の続編。

感想やレビュー

かつて、不可解に記憶を失うという経験をしていた夏生は、記憶屋を追う猪瀬と共に、記憶屋を探す。 記憶を消すのはいいこと?悪いこと? 印象に残ったフレーズ 「誰かを悲しませないために、我慢しなきゃいけないなんて、だから、どんな辛い記憶も抱えたまま生きていけなんて」 「相手の中から、自分の存在が消えてしまうというのは、そういうことだ。 これまで積み重ねてきた時間が、築いた関係性が一瞬で無になる」 一つ目は、記憶屋肯定派の夏生が、猪瀬の考えに疑問を呈す場面。「記憶を消すというのは、周りを巻き込む行為だから、よくない」という猪瀬の意見に対して、自分自身も、記憶を消さなければならないほど追い詰められているのだから、正当防衛だという意見だ。人のことを想うあまり、自分を殺しすぎてはいけない。本当の意味で記憶に殺されてしまう。 一方二つ目は、夏生が、知人の記憶を消されたという猪瀬の苦しみに思いを馳せ、自分と、親友、芽衣子の関係性と合わせて、新たな考えを得る場面。夏生自身も、芽衣子に、自分を忘れられたら…と思うとゾッとした。私も、友達に忘れられるのは、とても苦しく、辛いと思う。 「記憶を消す」という行為は果たしていいことなのだろうか。猪瀬も、「場合によっては、それ(記憶を消すこと)が最善、唯一の解決法であることもある」と言っている。それでも、忘れられたくない人に忘れられたり、絶対に忘れたくない記憶を取り上げてしまったりするのは良くない。 一巻で遼一も言っていたように、「後悔する」のは、未来へ進む第一歩だ。それから逃げてはいけない。つまり、軽い気持ちでそのことを「なかったこと」にしてはいけない。 友達に忘れられるのは辛いし、友達を忘れるのも寂しい。だからこそ、そんな残酷な手段を選ぶ前に、真っ向からぶつかって、話すことが大切だと思う。

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