森をひらいて
雛倉 さりえ
新潮社
作品紹介、あらすじ
外界から隔絶された学園で寮生活を送る少女たちの間で流行する、「森を作る」という遊び。誰もが森を持つ中、揺は一人だけ森を作ることができない。思い悩む揺だったが、激化する戦争の影が学園にも忍び寄る。一方、目的を持って森を観察してきたある生徒は、秘密の計画を進めていた。少女たちの魂が共鳴する時、奇跡が起きるー。
感想やレビュー
どちらかといえばファンタジー? 少女たちの内心を森として表現するのは面白いけど、少女たちをもう少し丁寧に追いたかった気もする。 戦争が始まって大人の思惑で隔離される少年少女という設定は匂わす程度でもいいのかなあ。舞台設定的には納得いくけど、本質と少しずれる気がして、伝えたいこともわかるし、内包する痛みや怒りもよくわかる。それ故に、森という設定がそれを具にするのでなく、ぼんやりとしてしまったように感じる。 耽美的な文章や語句は美しいが、フォントがひどく気に障る。特にひらがなの「お」。物語の雰囲気に合わせたいのはわかるが、没入感を遮られるのが嫌だった。歌集とか詩集なら良かったのかもしれない。