熱球
重松 清
新潮社
作品紹介、あらすじ
甲子園に憧れていた。予選を勝ち進んだ。でも、決勝戦前夜の悲劇が僕と仲間たちの夢を断ち切った。二十年後、三十八歳になった僕は一人娘を連れて故郷に帰ってきた。仲間と再会した。忘れようとしていた悲劇と向き合った。懐かしいグラウンドでは、後輩たちが、あの頃の僕らと同じように白球を追っていた。僕も、もう一度、マウンドに立てるだろうかー。おとなの再出発を描く長編。
感想やレビュー
40才を目前に東京の会社を辞め、高校まで過ごした故郷に娘とともに戻ってきた洋司。妻は留学中。しかし生まれ故郷は彼にとって安らぎの場所ではなかった。高校時代、甲子園を目前にしながらもある事件によって叶えることができなかった苦い思い出があるからだ。それから逃げるように彼は上京した。“逃げていい“という旧友と”逃げるな“という妻。それでも洋司は前向きに逃げる。逃げるが勝ちというじゃないか。逃げた先にも道はある。人生ってこうして出来上がるのだ。逃げても結局生きなくちゃならないのだから。