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世界中の青空をあつめて

世界中の青空をあつめて

中村航

キノブックス

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作品紹介、あらすじ

東京で挫折し、愛媛の実家へ戻った和樹は失意の日々を過ごしていた。ある日、テレビで流れた2020年東京オリンピック開催決定のニュース。それを見た祖父は和樹に55年前の手紙を託す。祖父の“果たされなかった約束”を探しに再び東京へ。手紙に導かれて出会った麻帆や五人の老人との交流を通して和樹が見つけたものはー?過去と未来の東京オリンピックを舞台に描く、希望と再生の物語。

感想やレビュー

ある日、テレビで流れた2020年の東京オリンピック開催のニュース。それを見た和樹の祖父は、誰にも見せていなかった55年前の手紙を和樹に託す。 東京で、これでもかというほどの失意を味わった和樹が、最初は「祖父のために」と東京を駆けずり回って手紙の「果たされなかった約束」を探す様が心を打たれた。 大学生時代の和樹の祖父の陸上にかける思いにも、今の自分と通ずるものがあり、素直に「綺麗だ」と応援したくなった。祖父が怪我をしたシーンでは、まるで自分ごとのように胸が苦しくなった。 印象に残ったフレーズ 「あと6年は生きなきゃならん。オリンピックが、観たいからな」 怪我をした直後の祖父にとって、当時の東京オリンピックは、どんなものだったのだろう。 絶望のどん底の気持ちで観ていたかもしれないし、もう立ち直って、希望を胸に観戦していたかもしれない。真相は、祖父以外わからないけれど少なくとも、2020年の東京オリンピックは、間違いなく祖父に「生きる希望」を与えたのだろう。あまり話さず、家でやつれていた祖父が、ここまで希望を見出せるようになったのか、と感動した。 そんな彼らが思い描いた東京オリンピックを、私たちは観た。 彼らは、そのオリンピックが未知のウイルスによって、延期されることなんて、予想だにしていなかっただろう。私たちですら、予想していなかった。 それでも、オリンピックは開催された。「ウイルスからの復興」と銘打って、形は違ったけれどもちゃんと開催されて、日本中、世界中の人々に感動を与えた。 オリンピックは、いつの時代も、人に希望をもたらすものなのだ。それが、自国開催なら尚更だ。

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