奇跡の人 The Miracle Worker
原田マハ
双葉社
作品紹介、あらすじ
アメリカ留学帰りの去場安のもとに、伊藤博文から手紙が届いた。「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」が青森県弘前の名家にいるという。明治二十年、教育係として招かれた安はその少女、介良れんに出会った。使用人たちに「けものの子」のように扱われ、暗い蔵に閉じ込められていたが、れんは強烈な光を放っていた。彼女に眠っている才能を開花させるため、二人の長い闘いが始まったー。著者渾身の感動傑作!
感想やレビュー
日本版ヘレン・ケラー。壮大なストーリーに感動。グイグイ惹き込む容赦ない筆致力に脱帽。 道を切り開くのは信じる力と情熱に他ならない。 れんと向き合う安のひたむきさと熱意に胸打たれる。 教育の大切さ、言葉のもつ奇跡を感じずにはいられない。
ヘレンケラーの話を日本に置き換えた小説。確かに三重苦の主人公「れん」と去場安との激しい葛藤にはとても厳しいものがある。物には名前があり、意味がある、と言うことを理解するまでの苦悩が詳しく書いてあり、それは臨場感のある展開だった。 しかし、れんの少女時代に出会った唯一の友達「キワ」とわずか3ヶ月足らず別れざるをえなくなってからの展開は書き急いでいる感じがした。 キワが津軽三味線の人間国宝に認定され、何十年振りかにれんと再開した時の描写には感激できるものはあまりなかった。 二人が別れてからの繋がりがとても弱い感じがする。 少し残念だった。 しかし、日本には盲目の方の生きる道があり、受け入れる社会であったことに今更ながら気付いた。 差別はあったものの、昔から多様性のある人を生かす道を持っていた国であったことにこの国の懐の深さを感じた。