野火改版
大岡昇平
新潮社
作品紹介、あらすじ
敗北が決定的となったフィリピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。野火の燃えひろがる原野を彷徨う田村は、極度の飢えに襲われ、自分の血を吸った蛭まで食べたあげく、友軍の屍体に目を向ける…。平凡な一人の中年男の異常な戦争体験をもとにして、彼がなぜ人肉嗜食に踏み切れなかったかをたどる戦争文学の代表的作品である。
感想やレビュー
戦争文学の金字塔と言われているらしい。 文章に高貴な美しさがある。 名刺主体の文なのだとか。 極限状態をこれほど読む者に現実味をもって迫ってくるのは、映画や絵画にはできないことだと思う。キリスト信仰のイメージがこの作品を底支えしていることに後半になって気づいた。