熱源
川越 宗一
文藝春秋
作品紹介、あらすじ
故郷を奪われ、生き方を変えられた。それでもアイヌがアイヌとして生きているうちに、やりとげなければならないことがある。北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を追い求める人々がいた。明治維新後、樺太のアイヌに何が起こっていたのか。見たことのない感情に心を揺り動かされる、圧巻の歴史小説。
感想やレビュー
樺太のアイヌや、植民地にされたポーランドで生まれた、故郷が二つある二人のW主人公の話。 史実に基づいたフィクションなので、1900年前後の歴史に詳しい人はより楽しめると思う。戦争の勝ち負けや植民地支配など、教科書で文字面だけ知っていることでも、そこに住んでいる人々の暮らしやアイデンティティについては考えてこなかったから、その類の心情描写があると心が痛んだ。 読み物としては、耳慣れない現地の地名などが出てくるので時間はかかったが、場面や時間軸が変わっても登場人物同士の繋がりが感じられて熱かった。