谷崎潤一郎「細雪」
谷崎潤一郎
パンローリング
感想やレビュー
思っていたよりずっと面白かった。4姉妹の交情が細やかで、尚且つ登場人物の心理描写がしつこく感じる程に描き込まれている。けれどもそれも上巻を読み終わって中巻に掛かると、その描写にも慣れて来る。そして、中巻では山津波や台風などの災害などのドラマチックな展開を挿入して、読者を引き込み虜にする。又、執拗にコイさん(大阪の末娘の呼び方)の自堕落に見える生活態度に、今度こそは姉達も彼女を見捨てるのではと思わされるのだが、そうはならないのである。クライマックスは、あれだけ難航した三女雪子の結婚が猛スピードで決まり、それと前後するようにコイさんやお春(女中)の今後の人生の行く末を匂わせて終わる。 心理描写は良いがもう少し艶やかな花見の描写があると思っていた。そこは少し期待外れだった。ただ、男性が書いたとは思えない程、着物をはじめとした女性の装いや身につける小物の描写は、驚くほどだった。
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