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九月、東京の路上で

九月、東京の路上で

加藤 直樹

ころから

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作品紹介、あらすじ

関東大震災の直後に響き渡る叫び声、ふたたびの五輪を前に繰り返されるヘイトスピーチ。1923年9月、ジェノサイドの街・東京を描き現代に残響する忌まわしい声に抗うー路上から生まれた歴史ノンフィクション!

感想やレビュー

2013年9月に書いたブログを元に筆者が、関東大震災について書いた本。丹念に現場を周り証言を集めている。災害が起きたまさにその時に、一体何が起きたのか?どうして流言蜚語が生まれそれが拡散されて行ったのか?をこの丹念な取材に寄って疑問から回答に近い物を提示してくれていると思う。そしてこの本には、現在(2013)が書かれている。新大久保で始められたヘイトスピーチに現在でも決して無くなっていない、韓国人に対する差別は、未だに日本人が震災の頃と変わらぬ問題を抱えていることを突きつけている。きちんと関東大震災の時の朝鮮人大虐殺を認めて、その責任に向き合って来なかったツケなのかと思う。いくら民間人が善意で調べて慰霊碑を建てたり、本を出して啓発活動を行う事で風化を防ぐ努力をしても、この本にあるように姿を変えて何処かに差別が吹き出してしまう。人の心は複雑だからどんな人間にも闇の部分はあると思う。それが非常時に自分でも知らない内に負の感情に飲み込まれてしまうのではないか?特に関東大震災前の日韓の情勢では下敷きがこれでもかと言うくらいにあった訳だ。でも現在でもそれは変わってないのでは無いのか?嫌韓が叫ばれて、一時は書店に嫌韓本が溢れていた。それは知らず知らずの内に人々の心の中に差別意識を育てて行くのだろう。恐ろしい事だと思う。『ねじ曲げられた桜』のように古代からの積み重ねられた記憶が作用して、次第に違う物が現われて悲劇を生み出してしまう。又、我々1人1人が知らない間にそれに荷担してしまう過程までを考えると、本当に恐ろしい事だと思う。報道されない、報道出来ないような現実がある事を忘れてはいけないと思った。

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