小説・大隈重信 円を創った男
渡辺 房男
文藝春秋
作品紹介、あらすじ
日本初の政党内閣の首班にして、早稲田大学の創設者ー。一般に大隈重信の業績といえばこれに集約されるが、大隈がその能力を最大限に発揮したのは、明治4年の「新貨条例」の布告によって完成された幣制改革であった。新通貨「円」はいかにして生れたのか。若き日の大隈の苦闘を描く傑作歴史小説。
感想やレビュー
慶応4年から明治4年、大隈重信の29歳から33歳の時をピックアップして、幕末維新時の日本の弊制改革を取り上げた小説。 江戸時代の弊制からの脱却を図り、新しい国日本の通貨を誕生させる為に苦心した大隈重信(大蔵省の実質的なトップ)の物語である。御一新との事で形状から単位、更に名称までの全てを新しい物にと思考する過程のドラマも面白いと思った。が、この新しい弊制改革は日本一国の物ではなく、貿易や外交を通じての諸外国との関わりをも巻き込んで、日本の幕開けの1つであった事が良くわかった。 薩摩と長州の藩閥をバックにする政府の他のメンバーとの確執と戦いながら、自分だけの実力で大蔵省のトップに立って諸外国との交渉にも挑み続けた大隈重信…彼の幼少期からの教育や彼を育んだ佐賀藩をやはりもっと知りたいと思った。墓は護国寺にある。