まるやまさんの感想、レビュー
まるやま
美しいミステリー作品。主人公の小林美桜を含むそれぞれの登場人物全員が個性的で歪でそれでいて人間的であり、さまざまな思考を持ってこの物語が構成されている。終盤に犯人が二転三転するところでは、目が離せないほどに興味を掻き立てられる。
くわがき あゆ
宝島社
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人の悩みはすべて人間関係に起因している。人にどう思われるかという思考はいわば他人からの評価を強制している自己中心的な考え方であり、他人がどう考えるか、どう行動するかは自分が影響できることでないので割り切ることが必要不可欠。幸せとは自分が他人の役に立っていることを実感することであるが、他人に必要性を感じさせることを強いることはできない(させる必要もない)ので、自分の中で他人貢献を完結させて実感することが必要。アドラー心理学に基づく生き方が出来れば他人からの評価に怯えることなく他人貢献を感じ、幸せに生きられると思うが、実践することがかなり難しい。生きてきた年数の半分の年数がかかると言われているのも納得できる。この考えに背かぬように生きることで、世界はフィルターを通したように輝き、今この瞬間から幸せになれると理解した。哲人と青年の対話方式でアドラー心理学について討論する構成も、哲学・心理学的な学問テイストな内容に反して人間らしさを感じられて読みやすかったのではないだろうか。人間関係に悩むことがあれば何度でも読みなおしたい一冊。
岸見一郎/古賀史健
終始気味が悪い。最初から最後まで答えはないし、どこの世界線の物語なのかわからない。読者に考察させるために敢えて背景は伏せているのか。作者が伝えようとしていることは一体何なのか。信じるものが違えばどんなおかしな理論・常識にも順応する人間の醜悪さを描いているようにも見えない。主人公(?)佐藤の一人称視点で描かれているが、普通ではない気持ちの悪い思考が生来のものなのか環境要因なのかが最後までわからなかった。他人の行動を分析的に観察して気味の悪い解釈をしたり不可解な疑問を持つのは何故なのか。未来の催眠のストーリーも、作中ではずいぶんと"普通"らしい真夏の監督した舞台のストーリーも気味が悪く意味もわからないが、なんとも引き込まれるような、怖いもの見たさを刺激するものであった。読んでいるうちに読者であるこちらも思考が破綻して頭がおかしくなりそう。この作品がなんたるかの1ミリも分からなかったが、何故だか頭に残る印象的で芸術的な作品。
遠野 遥
デヴィ夫人の経験した国際的な社交界でも通用するエレガントで女性らしい振る舞いのマナーが記されている。背筋がすっきりと伸びて堂々とした振る舞いに拍が付く。
ラトナ・サリ・デヴィ・スカルノ