星やどりの声
朝井リョウ
角川書店
作品紹介、あらすじ
星になったお父さんが残してくれたものー喫茶店、ビーフシチュー、星型の天窓、絆、葛藤ーそして奇跡。東京ではない海の見える町。三男三女母ひとりの早坂家は、純喫茶「星やどり」を営んでいた。家族それぞれが、悩みや葛藤を抱えながらも、母の作るビーフシチューのやさしい香りに包まれた、おだやかな毎日を過ごしていたが…。
感想やレビュー
きれいな、ミステリもあり若い子の感情もありで面白かった
父を亡くした6人兄弟が、それぞれに葛藤しながらも母と兄弟で父の残したものを大切にしていく物語 兄弟それぞれの年齢における不安や葛藤、他兄弟への妬みや劣等感に共感できる。朝井リョウは忘れてしまった学生時代の悩みや形容しがたい居心地の悪さを、描くのが上手い。またお互いに長けてる点を羨ましく思い、自分はそれに比べて劣っていると感じてしまう兄弟のよくある葛藤を丁寧に書く。兄弟だからこそ互いの性格や思いが手に取るようにわかってしまうこと、それに対して羨ましいという感情、第一子として生まれた責任、兄弟ってこうだよなつというのが目一杯盛り込まれた一作 兄弟の関係性の書き方もさることながら、母への感情や距離感、亡くなった父への思いも丁寧に書かれる。それぞれに悩みを抱え、当然だが性格の異なる兄弟が、父を、母を、父の残した、そして母が必死で繋いだ店を同じように心から大事にしていることがわかる。