月まで三キロ
伊与原 新
新潮社
作品紹介、あらすじ
「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ」。死に場所を探す男とタクシー運転手の、一夜のドラマを描く表題作。食事会の別れ際、「クリスマスまで持っていて」と渡された黒い傘。不意の出来事に、閉じた心が揺れる「星六花」。真面目な主婦が、一眼レフを手に家出した理由とは(「山を刻む」)等、ままならない人生を、月や雪が温かく照らしだす感涙の傑作六編。新田次郎文学賞他受賞。
感想やレビュー
月や雪などの自然とともに広がる人情物語の短編集。 短編集ゆえ、もっとこの先の展開が知りたい、となるように、どうなったのかが読者の想像に任せられてしまうが、そう思わされてしまうことが著者の技なのだと思う。 広大な自然と相反する、小さな人間たちの小さなお話。
幸せとは言えない中で、幸せへの取っ掛かりを掴む人たちのものがたりに、思わず引き込まれた。 著者は地球惑星科学で博士号を取得しており、月や地質や山や宇宙物理学などを、ものがたりの進行役にうまくはめていて、そこも興味深い。
ネタバレを読む
A
中にある星六花が面白かった というのも、主人公の状況、行動が自分に重なりすぎて感情移入がすごかった。あと、美しいについての言葉が面白かった。理科の話を混ぜながら人生を語るスタイルがマジ共感。