南洋のエレアル
中路啓太
中央公論新社
作品紹介、あらすじ
「エレアル」-パラオの言葉で、「明日」「未来」の意味。太平洋戦争さなかの昭和17年。日本統治下のパラオ・コロール島。小学校教員である宮口恒昭の長男・智也はある事件をきっかけに、パラオ人少年のシゲルと親友になった。だが、父の転勤で智也も隣島へ転校することに。二年が過ぎ偶然再会したふたりは喜び合うが、戦争の暗い影は、こののどかな南の島々にも迫っていたー。時は流れ、昭和63年末。パラオ共和国独立準備のため訪日したシゲルは、天皇の容体悪化が報じられる中、戦後すぐ消息が途絶えた宮口家の人々を捜しはじめるのだが…。日本人とパラオ人の歴史と心の交流、戦争の悲惨さ、そして日本人の未来を問う、感動長篇。
感想やレビュー
言葉の扱いに不安がなく骨太で、エンタテインメント性も高く、読むに苦労が全く無かった。 よくある感情ベタベタの戦記物ではない(百田氏の御本を思い出し少し笑った)。 共感できる主人公たちの心の動きをベースに、現代でなければ書き得ない新しい視点から描かれていて大変に面白かった。若く無垢でも老いても疲れても死の床にあっても額を上げエレアルを仰ぐことはできる、と嬉しく思った。