ねじ曲げられた桜(下)
大貫 恵美子
岩波書店
作品紹介、あらすじ
日本の将来を担うべき多数の若者が、特攻機に搭乗して海の藻くずと消えていったー「桜が散るように」。為政者は桜の美しさを、ナショナリズム高揚と戦争遂行に利用したのだ。下巻では、国家と国民のあいだに起こった「相互誤認」を、学徒特攻隊員の日記をきめ細かに分析して証明する。象徴人類学の見事な成果。
感想やレビュー
下巻は最初の方は涙が出て中々読み進めるのが辛かった。又、全巻を通じてあまりにも難しくて正直全然理解が及ばなかった。けれど、9.11の自爆テロと第二次世界大戦末期に日本兵による特攻を同一視する事に対しての彼女なりの回答なのだとは思った。特攻隊に志願した学徒兵の多くが、決して本当の意味で自ら特攻を望んだわけではないのもわかったし、ましてや天皇の為などでは無いことも!(まぁこれは読む前からわかってはいたが)日本の歴史の中で何故桜が特攻や戦争で散った兵士達を象徴する物になったのかという複雑な過程を詳述する為に、ここまで難解になってしまったのか?でももう少し一般人が読みやすくしてくれないと、せっかくの彼女の思いが多くの人に届かないと思う。それとコミュニケーションについては、確かにそうだと思えた箇所あった。コミュニケーションに限らず同じ景色を見ても人によって見ている物も感想も全く違ったりするし、同じ言語(日本語)を話していても会話の通じない人はいる。私がこの本で残念に思ったのは、過去に起きた誤ちが何故起きたのかを解き明かしてくれたなら、もっと読みやすい方が今後の教訓というか、参考になったかもと思ったからだ。でもここまで複雑な過程を経た文化の衣を纏った見えにくいイデオロギーに誤魔化されたなら、それを回避するのは難しすぎる。ネット社会になって誰でも発信する事が可能になってしまった現在では情報の取捨選択だけでも本当に大変😰ウクライナとロシアの戦争が始まって、去年はイスラエルまで戦闘を始めるし、元々ウクライナ戦の自体で第三次世界大戦は始まっているという見方もあるようだし、世界規模で未来がどうなるのか益々混沌として来てしまった。戦争が無くても日本は常に災害と戦っているような国なのに(元旦には能登地震もあったのに)本当に憲法から9条は無くしてはいけないと思う。『人間が歴史を作る』などは違うというのは良くわかった。法律1つにしても最初に意図したように運用されない事だって多いし、ある程度は読めたとしてもそれは短期間であって、時代が下る内になんでも変質してしまう。例えば忠臣蔵だって、多分1人1人であの行動にかけた思いは違ったはずだし、後世芝居になった時点でもう全く別物だっただろう。私達が出来るのはせいぜい書き残された物を検証する事だが、書き残されなかった思いは永遠にわからない。やはり歴史に意味は無く、事実がそこに有るだけだろう。 「隊員達は死ねば自分の魂が靖国神社に祀られることを承知していたが、神となるために死ぬことを選択した訳では無い。」海軍航空学試験研究所の技術士内藤 「彼ら(特攻隊の生き残り)は、自分達が命を犠牲にすれば何かが変わると純真な気持ちで信じていた若い頃を懐かしんで靖国に集まるのである」「彼ら(生き残り)は、死んだ仲間達の最期の言葉が「靖国神社で待っている」であったから靖国に集まるのである」