時空に棄てられた女 乱歩と正史の幻影奇譚
長江 俊和
講談社
作品紹介、あらすじ
江戸川乱歩と横溝正史。現実に師弟関係にあった二人が挑む不可能事件。 首なし死体と生首が次元を揺蕩い、うつし世と夢は混線し……。 ミステリー界の巨人たちが、悩み、もがき、執筆し、謎について語り、あげく事件の泥沼に巻き込まれる。 あり得ない事件、受け容れ難き怪奇幻想。時空を越える乱歩と正史の推理は、現代の私達をも浸食する。 二人の蜜月を蘇生させるという大胆不敵な試みに、完璧に翻弄された。-ミステリー作家 斜線堂有紀 悪魔的な発想で紡ぎ上げられた小説の混沌に身を委ねる愉悦と、その混沌に理知の光が差す瞬間の恍惚を堪能した。 ーミステリー評論家 村上貴史
感想やレビュー
乱歩と横溝を中心にノンフィクションとフィクションを織り交ぜ、二人の作品の特徴を活かしたようなミステリ作品。2人が現実に起きたかのような事件に巻き込まれるスリリングなストーリーになった。本作のトリックはまさに両者の作品を足して2で割ったような、いわば1冊で2度美味しいものになったような気がした。乱歩と横溝の世界観をうまく残したまま著者独自の作品のストーリーがハマっていたように思う。また、終章は2人の半生と作品の歴史を復習するような内容にもなっており、最後まで楽しめた。