その扉をたたく音
瀬尾 まいこ
集英社
作品紹介、あらすじ
ミュージシャンへの夢を捨てきれないまま、怠惰な日々を送っていた宮路。ある日、演奏に訪れた老人ホームで、神がかったサックスの音を耳にする。吹いていたのは、ホームの介護士・渡部だった。「神様」に出会った興奮に突き動かされた宮路はホームに通い始め、やがて入居者とも親しくなっていく…。人生の行き止まりで立ちすくんでいる青年と、人生の最終コーナーに差し掛かった大人たちが奏でる感動長編。二〇一九年本屋大賞受賞作家が贈る、たしかな希望の物語。
感想やレビュー
青年と老人の心の交流を中心に、主人公の青年が新たな一歩を踏み出し始めるまでの物語だった。舞台は老人ホーム。そこに暮らす人々と働く人々が描き出される。思えば、私もこれまで老人ホームに訪問させていただく機会があったし、父が似たようなリハビリ型の病院に入院してた頃もあって、その時のことを思い出しながら読み進めた。 青年の設定が、成長した我が息子(未来像)のように思えてならなかった。物理的に恵まれて育っていたけれども、そのことがコンプレックスとなっていた主人公の心の葛藤が描写されている。対照的に描かれる施設スタッフの青年に自分を重ねてしまう。渡部くんほど、さわやかに働けないけど。自分の境遇を受け入れ、前向きな姿ってかっこいい。
1
◎