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黄色い目の魚(さかな)

黄色い目の魚(さかな)

佐藤多佳子

新潮社

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作品紹介、あらすじ

海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれてー。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。

感想やレビュー

どちらも人と関わることが苦手なみのりと悟。2人は高校で、「絵」を橋渡しにして出会う。 印象に残ったフレーズ 「もしかしたら、テッセイは、母さんやおじいちゃんが言うように、ただの”負け犬”じゃないかもしれない。死ぬまで、好きなことをやり続けた一途な男なのかもしれない」 その時々の感情だったり、その人との関係性によって、人の見え方というのは全く変わってしまうのだと思う。テッセイも、通ちゃんも、決して真っ当な大人とは言えないけれど、でもその人の中に、はっきりとした「軸」があるのだな、と感じた。 また、角田光代さんの解説にも、なるほど、と思った。私は読み終わった時、みのりと悟を成長させ、今の形を作ったのはテッセイや通ちゃんの存在だと思っていた。しかし、よく考えたら、彼らを成長させたのは、彼ら自身に他ならないと思った。その気持ちを代弁してくれたのが、解説者の考え方だった。彼ら自身が、自分の「軸」を作り上げ、それに色をつけたのが、みのりからしたら悟で、悟からしたらみのりだった。 青春のこの時期特有の生きづらさを、みずみずしい文体で、等身大で描いた名著だと思う。

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