gegetomさんの感想、レビュー
gegetom
タイトルそのもの。まさに『さまよう刃』。目には目を歯には歯を、とはいうけれど。 人間的に生きることは、必ずしも理性的に生きることではないのだな。 私達が人間として最も恐れるものは、絶望なのかもしれない。
東野 圭吾
KADOKAWA
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息子くんの多面的なものの見方に感服。東京の避難所からホームレスが追い出された話では、伝えられたことをそのまま受けいれるのではなく、当事者の気持ちに寄り添って考え、息子くん自身で『社会を信じる』という課題を導き出していた。著書を通して息子くんの「思考する」姿が印象的だった。イギリスの教育システムによるものなのか。先進的な教育システムに関心する一方、緊縮財政下での市民生活はかなり厳しそうだ。イギリスの現状が、もしかすると少し先の日本の姿なんじゃないか、と少し不安にもなった。
ブレイディ みかこ
物語は主人公まりあの夫小野寺君が突然失踪するところから始まる。途方に暮れたまりあは夫との想い出の地である南の島を訪れる。島の情景やまりあの心情がとても丁寧に描かれ、それが南国独特の緩やかな時間の流れを醸し出している。本を開くたび、緩やかな時間の流れが漂ってくるようだった。ハッピーエンドでホッとするのだけど、小野寺君の失踪の原因や、先生の若い頃の話や、長老の悲恋の話など、匂わせながらも詳細が語られないところがいい。小川糸さんの作品を読むと、一杯のお茶でも丁寧にいれよう、という気持ちになる。
小川糸
ファンタジーでミステリーで少しバイオレンスな物語。仙台でコンビニ強盗をはたらき、警官城山から逃れ何故か荻島へ連れてこられた伊藤。そこは案山子がしゃべり、外界からも隔絶された奇妙な島だった。俗世間以上に俗な人間が暮らす荻島。どういう展開になるか予測ができず、最後は掻き込む様に読んだ。この作品で『天網恢恢疎にして漏らさず』という諺を知ったが、この諺通りの終わりを迎えたことにホッとした。ウサギさんのお祖母さんの『受け入れること』の話が心に沁みたな。
伊坂 幸太郎
『十年後の卒業文集』についての読後感。高校の同級生同士の結婚式に集まった旧友。そこに一人だけ参加していない子が。それは当時の新郎の彼女。5年前の事故以降行方不明になっている。書簡形式の文体が手記の雰囲気を醸し出しミステリー感が膨らんでいく。高校時代の思い出は楽しさと苦さが表裏一体。記憶の中の同級生の印象、勝手な先入観、自己満足な空想が絡み合い、行方不明に仕立てあげられた友人は落ちぶれた人生を送っていると噂されるが、実は…。ミステリーで始まった物語だけど最後は滑稽とも言える展開で終わった。
湊 かなえ